【連載】

知っているようで知らないO2Oを理解する

8 「オムニチャネル化」を推進するPOSとアプリ連携

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前回は「アプリ接客」をキーワードに、マーケティングオートメーションなどによる顧客の「パーソナライズ」について説明した。今回は、オムニチャネル化を目指す上で欠かせないPOSシステムとの連携による利便性の向上を取り上げる。

ECサイトとの顧客情報連携で、実店舗での「おもてなし」に厚みを

第1回でも述べた通り、実店舗・ECサイト・カタログなどのあらゆるチャネルにおいて、一気通貫した顧客対応を実現するのがオムニチャネルである。

オムニチャネルの実現には、「商品の在庫状況」「顧客情報」「ポイント情報」のすべてが、一意のマスタデータによって管理されている必要がある。POSシステムとECサイトをAPI(Application Programming Interfaceの略)によってつなぎ、これらの情報を一元管理できるASPサービスも多く登場している。

商品在庫が統一化されていることはもちろんだが、仮に実店舗-ECサイト間はおろか、各店舗間で顧客情報が連携されていなければ「A店では上客だが、B店では一見客」という接客に対する体温の違いが生まれる。

また、それぞれのチャネルでのポイント連携が果たされていなければ「店頭のポイントがECサイトで使えない」「ECサイトのポイントはECサイトでしか使えない」という、少なからず双方の利用において機会損失が生まれていることになる。「店頭」「EC」という区別なく顧客が自由に双方を行き来できる状態は、大手チェーンを中心にもはや当たり前の概念となりつつある。

ECサイトを含む販売網全体での接客の最適化を図る上で、オムニチャネル化はもはや切り離して語れない要素といえるだろう。

ショールーミングを強みにするJINS

ECの隆盛により実店舗で問題とされてきたのが、ショールーミングである。店頭で商品を確認し、最終的には最安値のECサイトで購入することで顧客自身としてみればメリットは高いが、顧客の流出により店舗維持に影響を及ぼすことは想像に難くない。

この動きを逆手に取り、ショールーミングをむしろ強みにするのがヨドバシカメラであり、メガネ・アイウエアブランドのJINSであろう。JINSは、店舗で購入した際の保証書をアプリ上から登録することで、同一度数のメガネをECサイト経由で購入することが可能となっている。また、一部店舗で先行していたこの取り組みは今秋より全店舗で導入される予定だという。

また、アプリ利用でポイントが貯まり、ポイント数に応じて店舗で利用可能なクーポンが発行されるようになっており、実店舗・ECサイトの双方をユーザーが行き来することを前提とした導線となっていることがわかるだろう。

インストール後のチュートリアル画面

店舗購入時の保証書を取り込むことができる

「JINS SNAP」のタイムライン

そのほか、特徴的な機能として、ユーザーが利用する商品をタイムラインとして紹介するコンテンツ「JINS SNAP」があり、それぞれの投稿から商品詳細を確認することができる。この機能がリリースされたのは最近のことで、購買促進を促す狙いが見て取れる。

「ショールーミングストア」の先駆け

このような流れを受けて、国内でも「ショールーミングストア」と呼ばれる業態が増えている。店舗では在庫を持たず、あくまでフィッティングやスタッフへの相談などの機能にとどめ、実際の商品購入はECサイトに集約するという具合である。店舗自体の面積がさほど大きくなくても、出店が可能というメリットがある。これにより、主要ターミナル駅周辺などの繁華街エリアへの進出も可能になる。

国内事例の先駆けとして、大手スポーツウェアメーカーのアシックスジャパンが京浜急行・品川駅に出展しているのが「アシックスステーションストア品川」だ。下り線ホーム上にある店舗では季節ごとのテーマ商品が陳列されているが、商品点数は多いとは言えない。その代わり、試着などを通じてECサイト経由で購入を促すのが狙いだ。

この店舗は実店舗というより、ECモールに近い考え方であることがわかる。1つの「面」として、交通量の多いエリアに出展し注力商品をピックアップすることで、ECサイトへの売上を促している。また、ECサイトへの誘導で店舗特有の「在庫切れ」のリスクを軽減し、結果として販売機会が増加することが考えられる。

実店舗から在庫が消える日は近い

主要食品スーパーでも「ネットスーパー」の考え方は既に浸透しており、これまで店舗ありきの業態であったメーカー直営の小売店舗なども、前述の「ショールーミングストア」に進出する事例が増えてきている。ショールーミングの流れに抗わず、ECサイトも含めた購買導線に対応する企業が国内でもさらに増加するものと考えられる。

実店舗では展示・試着などの必要最低限の機能にとどめ、購買はECサイトに一本化という流れが進むことで、特定の業態では実店舗から在庫が消える――そんな日が来ることもそう遠い話ではないだろう。また、その流れの中で、オムニチャネル化が必須であることは言うまでもない。

次回は、店舗での顧客体験を向上させる業態ごとの特徴的な機能を活用したアプリ事例を見ていきたい。

著者プロフィール

谷内 亮介


GMO TECH株式会社 O2O事業部 メディアプロデュース部 マネージャー。大学卒業後、私立大学事務局や広告代理店などの勤務を経て、2013年に株式会社ぐるなびへ入社、ビッグデータ・O2Oを用いた販促商品企画に携わる。2016年3月に当社入社。O2Oアプリ作成ASPサービス「GMOアップカプセル」の企画・プロモーション・アライアンスを担当。


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インデックス

連載目次
第8回 「オムニチャネル化」を推進するPOSとアプリ連携
第7回 MA活用とパーソナライズの進化で変化するアプリ接客
第6回 インバウンド対策として需要が高まる自治体のアプリ活用の実態とは?
第5回 アプリを活用した店舗集客の必要性とは?
第4回 押さえておきたい小売業界におけるO2O施策事例
第3回 押さえておきたい飲食業界におけるO2O施策事例
第2回 国内O2Oの歴史とその変遷(後編)
第1回 国内O2Oの歴史とその変遷(前編)

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