【連載】

知っているようで知らないO2Oを理解する

6 インバウンド対策として需要が高まる自治体のアプリ活用の実態とは?

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6回目となる今回は、自治体のインバウンド対策の局面でも導入が進んでいるO2Oアプリの現状と、その活用のポイントについて解説する。

東京オリンピック開催に伴うインバウンド需要への期待

2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催に向けて、訪日観光客向けのインバウンド対策への興味関心は、民間企業だけでなく自治体でも高まりを見せている。

訪日観光客に、旅の前・中・後を通じて情報提供を行い、観光地の周遊や帰国後の再訪意欲の喚起を図りたい自治体にとって、位置情報連動やスタンプラリーの機能を持つアプリは、需要にマッチした存在と言える。

事実、市区町村や観光協会などが、こぞって地域情報に特化したアプリをリリースしている。また、アプリをまだ展開していない自治体でもTwitter、Facebook、InstagramといったSNSを用いたPRが活発だ。それぞれのアプリやSNSでは、どのような展開が行われているのだろうか。以下、実際の運用事例をもとに、活用方法も含めて紹介しよう。

活用事例が増えているInstagram

近年、活用事例を増やしているのがInstagramだ。葉山マリーナで知られる神奈川県葉山町は市街の魅力的な写真にハッシュタグを交えて紹介し、フランクな語り口からフォロワー数を伸ばしている。

ハッシュタグを交えたキャンペーンは自治体の公式アカウントに採用されるという期待値や、プレゼントキャンペーンを交えることでフォロワーを大きく伸ばす可能性を秘めている。また、文章による訴求が主となるTwitterやFacebookと異なり、写真や動画による情報発信を主とするInstagramは、視覚的に魅力を伝えやすい点がその最たる特徴と言えるだろう。

例えば、みなとみらいや元町、中華街などの観光資源を多く有する横浜市のInstagramでは、投稿は原則英語で構成され、ランドマークタワーや赤レンガ倉庫などの名所の写真が鮮やかにタイムラインを彩る。1投稿につき「いいね」が1000件を超えることもある盛況なアカウントだ。

神奈川県横浜市(文化観光局)のInstagram

また、フォロワーが4000人に届こうかという群馬県前橋市のアカウントでは、それぞれの投稿を日本語・英語・中国語(繁体字・簡体字)・韓国語それぞれで記載しており、多くのユーザーに読ませるための工夫がなされている。また、投稿は前橋市の催事や自然の風景を中心に構成されており、自然豊かな土地の表情をよく表している。

群馬県前橋市のInstagram

PR+旅中サポートの2役を担うアプリ

当然ながら、アプリはモデルコースの案内やスタンプラリーなどの観光地PRの役目を果たしているが、もう1つの役目も担っている。それは、旅中の観光客に対するヘルプラインとしての役割だ。

その例が、フリーWi-Fiなどのインフラに関する案内情報だ。Wi-Fi整備で諸外国に後れを取っている日本での滞在において、Wi-Fiスポットの情報は観光客にとって非常に重要度が高い。また、突発的な災害情報の発信にも対応しており、地震などの災害時にプッシュ通知によって情報を受信することができるようになっている。

例えば、今年4月にリリースされたばかりの広島県福山市の観光アプリは、市内180カ所を超える観光スポットの紹介やスタンプラリー機能を有している。また、達成インセンティブとして楽天スーパーポイントとの交換も視野に入れているという。地図上にはユーザーが気に入ったスポットの写真や情報、道程などを記録する機能も保有している。

びんGO!福山

また、佐賀県の観光アプリ「DOGAN SHI・TA・TO?」は、「どがんしたと?」という佐賀弁によるアプリ名の通り、観光情報はもちろん観光客の"困りごと"を意識したコンテンツ構成となっている。自治体アプリとしては珍しくタイ語に対応し、アプリからは24時間対応のコールセンターへの連携が可能。また、無料Wi-Fiスポットの検索機能があり、上述のインフラに対する課題へのサポートも十分と言える。

SAGA TRAVEL SUPPORT"DOGAN SHI・TA・TO?"

京都府が提供する「KYOTO Trip+」は、事前の設定によってユーザーの興味分野に関する情報の受信を指定することができる。観光については、京都市街や丹後、山城などのエリア別、「食べる」「泊まる」などの興味がある分野別に情報が整理されている。また、観光以外にも気象情報や地震・津波などの警報機能を有しており、観光客が不慮のトラブルや災害に遭った際に安全に行動する為の配慮がなされている。

KYOTO Trip+

自治体発の観光アプリの意義とは?

観光アプリの目的は、興味関心を持った観光客との結びつきを強めて再来を促すものだが、単純な観光地の情報だけではWebサイトをアプリ化したにすぎない。既存の媒体で成し得なかった即時性がありきめの細かい情報発信こそ、アプリの価値と言っても過言ではない。

また、今後見込まれる外国人観光客の爆発的な増加を見据え、単純な観光情報だけでなく滞在期間中の生活に役立つ情報を盛り込むことが求められるものと考えられる。各自治体が観光を通じた地方創生を目指す中、その地域・文化の特色を伝えつつ、日本滞在中の心強いパートナーとしての機能が今後の自治体発アプリに求められていくだろう。

著者プロフィール

谷内 亮介


GMO TECH株式会社 O2O事業部 メディアプロデュース部 マネージャー。大学卒業後、私立大学事務局や広告代理店などの勤務を経て、2013年に株式会社ぐるなびへ入社、ビッグデータ・O2Oを用いた販促商品企画に携わる。2016年3月に当社入社。O2Oアプリ作成ASPサービス「GMO集客アップカプセル」の企画・プロモーション・アライアンスを担当。


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インデックス

連載目次
第8回 「オムニチャネル化」を推進するPOSとアプリ連携
第7回 MA活用とパーソナライズの進化で変化するアプリ接客
第6回 インバウンド対策として需要が高まる自治体のアプリ活用の実態とは?
第5回 アプリを活用した店舗集客の必要性とは?
第4回 押さえておきたい小売業界におけるO2O施策事例
第3回 押さえておきたい飲食業界におけるO2O施策事例
第2回 国内O2Oの歴史とその変遷(後編)
第1回 国内O2Oの歴史とその変遷(前編)

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