【連載】

知っているようで知らないO2Oを理解する

4 押さえておきたい小売業界におけるO2O施策事例

谷内亮介
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前回は、飲食業界におけるO2O施策やアプリ展開事例を取り上げた。今回は、小売業界におけるO2Oによる集客・リピート販促などの事例を紹介したい。

EC定着による百貨店の苦戦とその対策

戦後以降、主要都市の経済を担ってきた百貨店や大手スーパーの撤退が相次いでいる。地方都市だけでなく、都心部の主要駅周辺に立地する店舗の閉店も決して珍しい話ではなくなった。郊外型のショッピングモールの台頭や専門店のターミナルや駅ナカなど主要エリアへの出店が、顧客ニーズの多様化にも影響していると言えるが、ECが消費者の購買行動として定着したことも大きな要因と言えるだろう。

都心の駅前一等地に立地する百貨店の高級ブランドを中心とした品ぞろえは、場所を問わずあらゆるジャンルの商品を入手可能なECと対極とも言えるが、地の利を生かしたネット経由の取り寄せ商品の店舗受け取りや「位置ゲー」と呼ばれるゲームとの連動など、さまざまな手段による集客が推進され始めている。「O2O」という新たな力を得て、都心部の大型店舗がどう新たな進化を見せるのか注目したい。

テナント店舗の集客にも変化

集客方法や顧客コミュニケーションの姿を大きく変えたのは百貨店や大手スーパーだけでなく、駅ビルや商業施設内のテナント店舗にしても同じだろう。かつては、商業施設のチラシでの告知や店頭に訪れる顧客へのDMなど、その集客・販促手段も限定的だったが、スマートフォンの登場以降、ソーシャルメディアを駆使した告知やアプリによるリピート販促も一般化しつつある。

また、アパレル店舗を中心にPOSデータなどと連携した顧客情報の一元化や決済手段の多様化も進んでいる。これにより、シームレスにオンラインとオフラインが連携されることで、「欲しい商品の在庫がある店舗が即座にわかる」「店頭在庫のない商品をオンラインで注文して店頭で受け取る」など、オムニチャネル推進の動きも大手のみならず中小のチェーンでも見られるようになっている。店舗賃料と収益の兼ね合いなどから実店舗展開から撤退し、ECに専念するブランドや店舗も見られる中、オンラインとの上手な付き合い方が店舗集客の鍵を握ると言えるだろう。

ショッピングモールにおけるアプリ展開

ショッピングモールにおけるアプリ展開として、「三井ショッピングパークアプリ」を紹介しよう。同アプリは三井不動産商業マネジメントが提供している。

ららぽーと以外にもラゾーナ川崎プラザや三井アウトレットパークなど、複数の業態を展開する同社にとって、アプリは複数施設への送客のハブとして機能している。アプリでは、顧客が指定するお気に入りの店舗のイベントやセール情報などが発信されているほか、ポイントカードとの連携機能も保有している。

スプラッシュ(起動)画面

ホーム画面から複数の店舗情報を横断的に確認することができる

ポイントカードとの連携により、アプリをかざすだけでポイント利用が可能

食品スーパーにおけるアプリ展開

食品スーパーにおけるアプリ展開として、「ベイシアお得アプリ」を紹介しよう。同アプリはベイシアが提供している。

傘下にカインズ、ワークマン、セーブオンなどのチェーンを抱える関東有数の一大スーパーマーケットである同社の公式アプリでは、日々のチラシ情報などがチェックできるほか、同社の公式YouTubeチャンネルで展開する「かんたんレシピ」の動画が閲覧可能となっている。

ホーム画面

チラシ情報

動画(公式YouTubeチャンネル)

アパレル店舗におけるアプリ展開

アパレル店舗におけるアプリ展開としては、Forever21 Japan Trading Companyのアプリ「FOREVER 21を紹介しよう。

日本上陸後、早くから各種SNSでのPR展開を行ってきた大手ファストファッションチェーンの同社は、LINEやアプリの登録促進に店名にちなんだ「21%オフ」クーポンをユーザーに提供することで、ダウンロード促進を図っている。また、アプリ内のバーコードスキャンを利用して、店頭商品の情報を検索することが可能となっている。

ホーム画面

会計時最高値の商品が21%オフとなる限定クーポンの発行

商品タグに付帯するバーコードをスキャンすると、オンラインショップの商品情報を参照することが可能)

雑貨小売におけるアプリ展開

雑貨小売におけるアプリ展開としては、2つの例を紹介しよう。

バルスが提供する「Francfranc公式アプリ」は、Francfranc会員向けのロイヤリティ向上施策の1つとして活用されている。オンラインショップとの連携だけでなく、会員向けのシークレットクーポンの配布なども行われており、店舗公式アプリとして必要な機能が網羅されている。

ホーム画面

マイページ

オンラインショップ

続いて、イオングループの生活雑貨店となるR.O.Uは店舗公式アプリ「あそびの雑貨店」を活用して数値を改善した事例となる。

R.O.Uは現在全国に25店舗を展開しており、店舗ごとにクーポンやプッシュ通知をカスタマイズして配信を行っている。企業の店舗公式アプリは新規獲得よりリピーターの獲得の側面が強いが、来店顧客の属性に応じたメッセージングを行うことで、より顧客とのエンゲージメントを高めるといった効果も期待される。

同社はアプリリリースを機にチラシによって配布を行っていたクーポンを廃止し、アプリ内での配布に切り替えたことにより利用率が10倍に伸長したという。

ホーム画面

キャンペーン情報

スタンプカード

次回は、店舗が独自のアプリを構築することのメリットやアプリならではの販促展開について紹介したい。

著者プロフィール

谷内 亮介


GMO TECH株式会社 O2O事業部 メディアプロデュース部 マネージャー。大学卒業後、私立大学事務局や広告代理店などの勤務を経て、2013年に株式会社ぐるなびへ入社、ビッグデータ・O2Oを用いた販促商品企画に携わる。2016年3月に当社入社。O2Oアプリ作成ASPサービス「GMO集客アップカプセル」の企画・プロモーション・アライアンスを担当。


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インデックス

連載目次
第4回 押さえておきたい小売業界におけるO2O施策事例
第3回 押さえておきたい飲食業界におけるO2O施策事例
第2回 国内O2Oの歴史とその変遷(後編)
第1回 国内O2Oの歴史とその変遷(前編)


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