この記事では、2万人以上のリーダーと向き合ってきたエグゼクティブコーチが、現場で使える超実践的なメソッドを紹介する『チームが「まとまるリーダー」と「バラバラのリーダー」の習慣』(林健太郎/明日香出版社)から一部を抜粋してご紹介。今回のテーマは「チームがまとまるリーダーは『復唱』し、バラバラのリーダーは『いいこと』を言おうとする。」
チームがまとまるリーダーは「復唱」し、バラバラのリーダーは「いいこと」を言おうとする。
悩み事を相談されると、「いいこと」を言いたい欲、湧いてきませんか? その誘惑に負けてしまった例がこちら。
部下:あのー、いまお時間、いいですか?少しご相談が。
上司:うん、どうした?
部下:言いづらいんですけど、A先輩が苦手で……。
上司:ああ、あいつ誤解されやすいんだよね。いいやつなんだけどね。
部下:はい……。でも、ミーティングも勝手に休んだり。
上司:本人と話はした? 何事も、まずは話し合いからだよ。
部下:前、話しかけたら「今!?」って言われて以来、怖くなって。
上司:それはあれだね、忙しいときに話しかけたんだね。
部下:はい、申し訳なかったです。でも、いつもお忙しそうで……。
上司:そこはタイミングを見ないと。私も昔、君と似た苦労をしたんだけど……。
この上司、部下の話をまったく聞かず、最後は自分の話をはじめてしまう「会話泥棒」という悪事(笑)を働いています。
「でも、相談されたからアドバイスをしてるんだよね?」 「部下の参考になるなら、自分の話をしたっていいのでは?」 と思った方に、知っておいてほしいことがあります。
この場面で部下が1番欲しいのは、アドバイスではありません。自分の状況や感情を「わかってほしい」。これが優先順位のトップです。
もう1つ、この上司の「地味なやらかし」を指摘しましょう。「あいつ、誤解されやすいんだよね。いいやつなんだけどね」と、自分の見解を述べていることです。
部下にしてみれば「わかってほしい」の逆をされた形。出鼻をくじかれた上に、「上司がAさんをどう思っているか」に気を遣わないといけないストレスも加わります。
自分の気持ちを何気なく話すと、相手に負担がかかることがある。これも、聞くときに覚えておきたいポイントです。
「アドバイスも感想も言えないのなら、どうすれば?」
――はい、ここで「復唱」の登場です。
復唱は、安全かつ効果抜群。聞くときの必携装備品です。同じ場面で、復唱を使った「いいバージョン」がこちら。
部下:あのー、いまお時間、いいですか? 少しご相談が。
上司:うん、どうした?
部下:言いづらいんですけど、A先輩が苦手で……。
上司:うーん、そうかぁ、苦手なんだね。
部下:ミーティングも勝手に休むんです、同じチームでやってるのに。
上司:そっか。一緒に仕事してる、って感じられないんだね。
部下:そうなんです! 話そうにも、いつも「話しかけるなオーラ」があって。
上司:話しかけるなオーラかぁ! うんうん……。
復唱は、「あなたの言うこと、ちゃんと聞いているよ」という承認でもあります。承認されると、部下は「わかってくれるんだ」と感じて信頼度を高め、ますます話してくれます。部下の口調も、はるかに「乗った」感じになっていますよね。
「いやでも、聞いてるだけで解決してないじゃん!」と思った方。最初の「わかってくれるんだ」を経ないと、永遠に解決はしません。
逆に言うと、この段階を経ると、部下は自ら解決に向かえるようになります。
『チームが「まとまるリーダー」と「バラバラのリーダー」の習慣』(林健太郎/明日香出版社)
部下のやる気・成果UP! 驚くほどチームが強くなる! 「まとめる力」を知ればリーダーはこんなに面白い。――リーダーの皆さん、こんな悩みを抱えていませんか?「チームがバラバラ、部下が何を考えているかわからない」「部下のモチベーションが上がらず成果が出ない」「リーダーとして自信がない」――世代間の差がますます広がり、働き方の選択肢も増えている今、これまでの「先頭に立って引っ張るリーダー像」とは、違うリーダー像が求められています。本書では、2万人以上のリーダーと向き合ってきたエグゼクティブコーチが、現場で使える超実践的なメソッドを紹介します。