東京工業大学(東工大)は、新物質「ストロンチウム・イッテルビウム・インジウム酸化物(SrYbInO4)」を発見し、SrYbInO4が純酸化物イオン伝導体としては新しい結晶構造のグループに属することを見出したと発表した。

今回発見した新物質SrYbInO4における1つのテスト的な酸化物イオンのエネルギー図(出所:東京工業大学Webサイト)

同成果は、東京工業大学理学院化学系の八島正知 教授らの研究グループによるもの。詳細は物理化学の国際誌「The Journal of Physical Chemistry C」に掲載された。

イオン伝導度は、その材料を構成する結晶構造と密接な関係がある。従来のイオン伝導体は、既存のイオン伝導体の組成を改良することで開発が進められてきた。しかし、イオン伝導体を開発するためには、新構造の材料の開発が必要不可欠だ。従来の手法では、新構造ファミリーの酸化物イオン伝導体は経験や勘、偶然により発見されることが多かった。 これまで研究グループは、過去に報告されている無機物質の結晶構造から計算したイオン伝導経路と、これまでに報告されている酸化物イオン伝導体の結晶構造の詳細な検討により新構造ファミリーの酸化物イオン伝導体を開発することに成功してきた。

今回の研究では、電子伝導性が比較的発現しにくい構成元素を選択し、高温で比較的安定であるCaFe2O4型構造に着目。CaFe2O4型構造をとると期待されるサイズの陽イオンを選択することで新物質の探索および、SrYbInO4を実際に固相反応法により合成することに成功した。

また、中性子回折、放射光X線回折、実験室系X線回折、第1原理計算などでSrYbInO4の結晶構造を解析した。その結果、SrYbInO4の結晶構造が、CaFe2O4型であることを見出した。CaFe2O4型構造には、3種類の陽イオン席があり、同研究グループではa席、b席、c席と名付けた。各席におけるイオンの占有率を慎重に検討した結果、a席はSrで充填されており、b席とc席にはYbとInの両方が存在していることが判明した。この占有状態の不規則性の度合いの発見によって、イオン伝導度を制御できる可能性もあると研究グループは説明している。

なお、今回の成果を受けて研究グループは、イオンの大きさと元素の組み合わせ、および構造の安定性に着目して新物質で新構造型の酸化物イオン伝導体であるSrYbInO4の発見に至ったものであり、同様な手法で新物質探索が盛んになると考えられるとコメントしている。