名古屋大学は、日米の国際共同研究により、NASAの科学衛星「THEMIS衛星」の観測データから、周波数1Hz程度の電波が宇宙のプラズマの中から発生する瞬間の観測に成功したことを発表した。

同成果は同大宇宙地球環境研究所の小路真史特任助教、三好由純准教授、東北大学大学院理学研究科の加藤雄人准教授、東京大学大学院理学系研究科の桂華邦裕助教、笠原慧准教授、京都大学生存圏研究所の中村紗都子氏、大村善治教授らの研究グループによるもので、9月14日、米国地球物理学連合の発行する論文速報誌「Geophysical Research Letters」電子版に掲載された。

地球周囲の宇宙空間における自然電波の発生メカニズム(出所:名大ニュースリリース)

ジオスペースのプラズマからは、様々な電波が発生しており、プラズマの分布やエネルギーを変えてしまうことが知られている。特に周波数1ヘルツ程度の「電磁イオンサイクロトロン波動」は、放射線の分布を変えたりオーロラの発生に寄与したりすると考えられている。しかし、プラズマの中から電波が発生する瞬間は観測ではこれまで捉えられていなかった。

共同研究グループは、電波とプラズマの位相関係からプラズマ分布の揺らぎを特定し、 相互のエネルギー授受を求める新しい解析手法を開発した。NASA の科学衛星「THEMIS」のデ ータをこの手法で詳細に分析することで、「電磁イオンサイクロトロン波動」の発生する瞬間を特定することに成功した。電波が発生しているときには、その場所に存在するイオン群の中に、数秒間だけ存在する左右非対称な穴(ホール)が作り出されることを発見した。また、この穴の存在によってイオン群のエネルギーが電波を生み出していることを実証した。

このたび開発された手法は、昨年12月にJAXAによって打ち上げられたジオスペース探査衛星「あらせ」 に応用され、宇宙に存在する電子によって作り出される電波の発生過程を明らかにするとしている。また、宇宙に存在する様々な種類の電波が生まれる仕組みを解明するのに活用されていくことが期待される。