国立がん研究センターは9月12日、2017年3月に竣工した同センターの新たな研究拠点となる新研究棟の本格稼動開始に合わせ、内部を報道陣に公開、今後の目指す方向性などの説明などを行った。

2017年3月に竣工し、研究設備の移設などを終え、本格稼動を開始した国立がん研究センターの新研究棟

新研究棟について、同センターの間野博行 理事・研究所長は、「改革のシンボル」と表現。ここを活用していくことで、未来に向けた大きな一歩を踏み出したいと思っているとした。そんな新研究棟の特徴は、開放されたオープンスペースが多く設けられていること。こうした場所において、専門分野が異なる研究者同士が自由にコミュニケーションしてもらうことで、従来になかった新たな知の創出の実現を支援していくとする。

また、各フロアごとに役割が異なり、がん研究に向けたさまざまな機能が集約されたものとなっている。建屋は地上14階建てで地下はない。地下がないことについては、災害対策の1面もあり、東京湾で発生する津波の高さが2mということで、研究機能を2階以上にすることで、浸水のリスクに備えたほか、1階は非常時には一般の人にも開放するなどの用途も想定したフロアとなっている。

新研究棟の各フロアの概要

地上14階建てで、1階が上述の理由などから、300名以上が収容可能な大会議室やセミナールームを設置。2階が検体を保存するバイオバンク、3階が同センターの研究チームと共同での研究を進める企業が入る連携ラボ、4階が研究者たちが共同で利用する次世代シーケンサーや質量分析機、レーサー蛍光顕微鏡などのほか、放射性同位元素(RI)実験室といった設備が設置されている。また5階は機械室、6階は将来計画用フロアと位置づけられており、現在はどういった方向性のフロアにするかといったことの検討を開始しようという段階にあり、まだ何も入っていないフロアとなっている。そして7階には、「がんにならないための研究」、「がんを早く見つけるための研究」、「がんとともによりよく生きるための研究」を3本の柱として、コホート研究などを行ったりしている「社会と健康研究センター」が、8階には企業などの他施設も含めた研究者とのパートナーシップのもと、イノベーションと創薬、トランスレーショナルリサーチ(TR)の推進を行う「基盤的臨床開発研究コアセンター(Foundamental Innovation Oncology Core:FIOC)」をそれぞれ設置。9階~13階までを研究所の研究室とし、最上階の14階には幅広いニーズ対応を目指した動物実験室が設置されている。

8階の基盤的臨床開発研究コアセンターの設備

4階の共通機器室の様子。左上はサーバルームの様子。サーバラックは2列あるが、左側はまだサーバを入れておらず、今後の能力拡充にはまだ余裕があるという

2階のバイオバンクの様子

なお、間野氏は、新研究棟の本格稼動に併せ、センター内の施設との密接な連携と、企業やアカデミアとの積極的な連携を図っていくことで、新たな医療の創出を目指すとしており、こうした新たな取り組みを国立がん研究センターが行うことで、世界のがん研究・医療をリードできる存在になれれば、と抱負を述べていた。