大阪大学(阪大)は8月30日、染色体のセントロメア領域のDNA組換えが厳密に制御されていることを明らかにしたと発表した。

同成果は、大阪大学大学院理学研究科 中川拓郎准教授、同大学院生のFaria Zafar氏、沖田暁子氏、基礎生物学研究所 中山潤一教授らの研究グループによるもので、8月29日付の英国科学誌「Nucleic Acids Research」オンライン版に掲載された。

セントロメアは、染色体の移動をつかさどる動原体の足場となる染色体領域であり、正確な染色体分配が重要となる。しかし、リピート配列によって構成されているため、転座などの染色体異常が生じる脆弱領域でもあることが知られている。減数分裂期では、セントロメア領域でのDNA組換えが起きないよう制御されている一方で、体細胞分裂期では、そのような組換え制御はないと考えられていた。

今回、同研究グループは、セントロメアのリピート配列が比較的シンプルな分裂酵母Schizosaccharomyces pombeに着目。セントロメアで起きる組換えと染色体腕で起きる組換えを詳細に比較した。この結果、染色体腕ではRad51依存的組換えとRad51非依存的組換えの両方が起きるのに対して、セントロメアではRad51依存的組換えしか起きないことが明らかになった。また、染色体腕に比べて、セントロメアでは交叉型組換えが少なく主に非交叉型組換えが起きることがわかった。さらに、こうしたセントロメア特異的な組換え制御が破綻すると、セントロメア・リピートを介した染色体異常が高頻度で起こることがわかった。

今回の研究は、生物が染色体領域に応じてDNA組換えの様式を使い分けることを明らかにしたもので、こうした組換え制御は、ゲノムの約50%をリピート配列が占めるヒトでは、より重要であるものと考えられる。同研究グループは、リピート配列を介して起きる染色体異常を抑制するメカニズムの解明やゲノム編集技術や遺伝子治療への応用が期待されると説明している。

分裂酵母の染色体のセントロメア領域のリピート配列とセントロメア特異的な組換え制御 (出所:阪大Webサイト)