東大、鉄系超伝導体において伝導状態と共存する新奇な電子秩序を観測

東京大学(東大)は8月28日、鉄系超伝導体において、超伝導が発現する温度の近傍で出現する新しい電子秩序相を発見したと発表した。

同成果は、東京大学大学院工学系研究科 下志万貴博助教、石坂香子准教授、東京大学物性研究所 辛埴教授らの研究グループによるもので、8月25日付の米国科学誌「Science Advances」に掲載された。

2008年に発見された鉄系超伝導体は、銅酸化物高温超伝導体に次ぐ高い超伝導転移温度を示すことから室温超伝導体の候補として注目されている。さらに高い超伝導転移温度を実現するためには、超伝導機構を解明することが必須となる。

超伝導発現のメカニズムは、超伝導が発現する温度近傍で起こる電子秩序と関係しており、これまでの研究で、電子の持つスピンが秩序化を引き起こすことが知られていた。この秩序状態は温度の上昇によって消失するが、秩序が消失するよりもさらに高い温度領域においても電子が不安定な振る舞いを示すことが報告されていた。

今回、同研究グループは、レーザー光電子分光法を用いて鉄系超伝導体 Ba1-xKxFe2As2 における電子のバンド構造を各軌道に分離して観測することで、電子の秩序化の理解を試みた。この結果、最も高い転移温度を示すK濃度の超伝導状態において、結晶格子の2倍周期を持つ未知の電子構造を発見。さらに高温およびKの高濃度領域においても同様の周期性を観測し、超伝導相を覆う新奇な電子秩序相の存在を明らかにした。

これまでKの低濃度領域におけるスピン秩序は超伝導と競合することが知られていたが、今回明らかになった秩序状態は超伝導と共存関係にある点が大きく異なる。秩序形成の起源のひとつとして、軌道整列の寄与が考えられるという。

同研究グループは今回の成果について、今後、鉄系超伝導体の複雑な超伝導機構の理解、さらにはより高い超伝導転移温度を示す物質の探索に結びつくことが期待されると説明している。

レーザー光電子分光により観測したBa1-xKxFe2As2(x=0.41)のバンド構造の温度依存性(上段)とその模式図(下段)。降温に伴い成長する平坦な強度が、バンド構造の周期性の変化を示している (出所:東大Webサイト)



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