名古屋大学は、同大学の小田洋一名誉教授および富山大学大学院医学薬学研究部(医学)の竹内勇一助教による研究チームが、魚の「右利き」「左利き」が発達段階でどのように獲得されるかについて、鱗食魚を用いて研究し、捕食時にみられる襲撃方向の利き手は経験依存的な学習によって確立されるが、運動能力の左右差は生まれつき決まっていることを突き止めたことを発表した。この研究成果は8月21日付けで、英国科学雑誌「Scientific Reports」に公開された。

鱗食魚は、個体ごとに口部形態に左右差があり、獲物の魚のウロコをはぎとって食べる捕食行動において、獲物の右から狙う「右利き」と、左から狙う「左利き」がほぼ半数ずつ存在する。

研究チームは、アフリカ・タンガニイカ湖での繁殖で得た鱗食魚の幼魚や成魚を用いて、捕食行動の利きの獲得メカニズムを分析した。その結果、鱗食魚には生得的に捕食に有利な方向があり、鱗食経験から有利な襲撃方向を学習することを明らかにした。

人間の「利き手」と同様に、さまざまな動物においても「利き」があることが報告されているが、その獲得機構についてはほとんど明らかになっていなかった。鱗食魚の利きは非常に明瞭で、それを制御する入力から出力までの神経回路が想定できる。今後は、未だ明らかになっていない「利きの脳内制御機構」の全容解明が期待できると説明している。