木やガソリンなどを燃やしたとき、不完全燃焼だと黒い「すす」が出る。この炭素の微粒子は、地球の気候に影響を及ぼす。空中では太陽光を吸収して大気を暖めるし、北極の氷に付着すれば、黒くなった氷は太陽光を反射しにくくなって、とけやすくなる。そのため、「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」の報告書でも、二酸化炭素やメタンと並んで、地球温暖化をもたらす要注意の物質に挙げられている。

図1 朱さんらが評価の対象にした12の地域(図はいずれも朱さんら研究グループ提供)

図2 MODISと解像度30メートルのLandsatのセンサーがとらえた耕作地火災の焼失面積の比較。Landsatのセンサーがとらえた焼失地域(赤)の一部しかMODIS(青)は検出できなかった。

ところが、この「すす」に地球を温める効果がどれくらいあるかは、二酸化炭素やメタンなどに比べて、よく分かっていない。そもそも、どれくらい発生するかが、はっきりしない。かなりの「すす」を出しているとみられる世界の林野火災について、海洋研究開発機構の朱春茂(しゅ しゅんも)ポストドクトラル研究員、小林秀樹(こばやし ひでき)主任研究員らの研究グループは、その焼失面積が従来の推定をかなり上回っていることを突き止め、このほど発表した。

現在、林野の焼失面積は、米航空宇宙局(NASA)の地球観測衛星に載せたMODISというセンサーをもとにしたデータを使うことが多い。ところが、MODISの解像度は500メートルと粗いため、小さな火災は見逃されている可能性があった。そこで研究グループは、さまざまな植生を持つ12の地域をロシア、カザフスタンから選び、別の衛星に積まれた解像度が2~30メートルのセンサーによるデータを使って、北極の海氷面積が最小になっていた2012年の夏季を対象に、焼失面積を計算しなおしてみた。

その結果、耕作地の場合、MODISを使う従来法だと、焼失面積の13%しかとらえられていないことが分かった。MODISの解像度が粗いため、小規模な野焼きが見逃されていたらしい。その一方で、大規模な火災が多い森林や草地では、従来法でもかなりの部分がとらえられていた。12地域全体だと、実態は、従来の見積もりから16%の上方修正が必要になるという。

この結果について、小林さんは、「今回の研究で明らかになった従来のデータとの差は、地球温暖化について考える際にも、ぜひ考慮していくべきだ」と話している。

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