理研環境資源科学研究センター代謝システム研究チームの岡村英治特別研究員と平井優美チームリーダーの研究チームは6月14日、シロイヌナズナにおいてセリンの生合成を担う3-ホスホグリセリン酸脱水素酵素(PGDH)の新しい制御機構を発見したことを発表した。

生体を構成するタンパク質に含まれるアミノ酸は20種類あり、その1つのセリンは、細胞膜を構成する一部の脂質やDNAやRNAなどの核酸の原材料でもある。また植物では、他のアミノ酸のトリプトファン、システイン、メチオニンのもと(生合成前駆体)であり、重要なアミノ酸だ。

セリンは、解糖系やカルビン回路から枝分かれする「リン酸化経路」と呼ばれる代謝経路で生合成される。リン酸化経路は、微生物、植物、哺乳動物に保存されている。大腸菌におけるセリン生合成の制御は、3-ホスホグリセリン酸脱水素酵素(PGDH)の活性の調節が鍵となっている。しかし、植物におけるPGDH活性制御の詳細については明らかになっていなかった。

3-ホスホグリセリン酸脱水素酵素(PGDH)活性の調節を介したアミノ酸代謝の制御

今回、理研の研究チームは、シロイヌナズナの三つのPGDHアイソザイムの遺伝子(PGDH1、PGDH2、PGDH3)を大腸菌内で発現させて組換えタンパク質を作製し、試験管内でそれぞれの酵素活性を調べた。その結果、PGDH1とPGDH3の活性は、L-セリンによる阻害を受け、L-アラニン、L-バリン、L-メチオニン、L-ホモセリン、L-ホモシステインによる促進を受けること、PGDH2はいずれのアミノ酸による制御も受けないことが分かった。また、PGDH1はトリプトファンの生合成に関わっていることから、シロイヌナズナでは、システイン、ホモシステイン、メチオニンの細胞内量が増えたとき、PGDH1を活性化することで、セリン生合成と続くトリプトファン生合成を促進し、アミノ酸の量的バランスを保っていると考えられる。

本成果は、生命現象の理解、セリン生合成制御の進化的意味の理解に新たな糸口を与えるものと期待できる。本研究は6月14日、英国の科学雑誌『Scientific Reports』に掲載された。