情報通信研究機構(NICT)、大阪大学(阪大)、北海道大学(北大)で構成される研究グループは6月15日、無意識に英単語のリスニング能力を向上できるニューロフィードバック技術の開発に成功したと発表した。
同成果は、NICT 脳情報通信融合研究センターの常明 研究員、成瀬康 脳情報工学研究室 室長、柏岡秀紀 同センター統括、阪大 大学院情報科学研究科の古川正紘 助教、安藤英由樹 准教授、前田太郎 教授、北大 情報科学研究科の前田太郎 准教授らによるもの。詳細はオープンアクセスの科学雑誌「PLOS ONE」に6月15日付け(米国時間)で掲載される予定だという。
日本語を言語とする日本人が、英語のリスニングにおいて、課題となるのが日本語にないrightとlightのような音の聞き分けである。リスニングの学習は、rightなのか、lightなのかを聞いて、どちらの音であるかのテストを行い、正解か否かを学習者に伝えて、学習を促すことが多いが、どうしても時間がかかってしまうという問題があった。
今回、研究グループでは、音の違いに対して反応する脳活動(Mismatch Negativity:MMN)を強化するニューロフィードバック技術を開発。具体的には、ニューロフィードバック技術は、脳から脳活動パターンを取り出し、その情報を本人に伝えることで、その脳活動パターンを所望のパターンに近づけるための学習を可能とする技術であり、実験では、rightとlightの音を聞いている時の脳波から音の聞き分けに関連する脳活動パターンを取り出し、その大きさをディスプレイ上に円として表現する形で学習者にフィードバック。学習者には、音を流すが、音を無視して、何を考えてもよいので、緑の円を大きくするようにイメージしてもらう指示を出し、1日あたり1時間程度のトレージングを合計5日間実施してもらったという。
その結果、単に音を聞いているだけでなく、MMNを大きくするというニューロフィードバックによりテスト結果が向上することが確認できたとする。
なお、研究グループでは、今回は、基礎的な検討を行うための研究であったため、MMNの大きさを緑の円の大きさで学習者に提示したが、例えば、MMNの大きさをレーシングカーのスピードに対応させたレーシングゲームとすることで、学習者は単にレーシングカーのスピードを上げて前の車を抜くことに集中するだけで、気が付くと英単語のリスニング能力が向上しているといったことも可能になると説明している。また、今回の研究ではRとLに関してのみの結果であったが、日本人が苦手は英語の発音はほかにもあるため、そうした発音を効率よく学習できるシステムの開発を産学官で連系していきたいとしている。