九州大学は、同大学カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所(I2CNER)と同大学大学院工学研究院の小江誠司主幹教授らの研究グループが、JNCとの共同研究により、水素(H2)と一酸化炭素(CO)を燃料とする燃料電池触媒の開発に成功したことを発表した。この成果は6日、ドイツの学術雑誌「Angewandte Chemie International Edition」オンライン版に掲載された。

水素と一酸化炭素が50対50の比率の燃料で駆動する燃料電池のメカニズム(出所:九大Webサイト)

燃料電池の白金(Pt)触媒は、燃料である水素に含まれる極微量の一酸化炭素によって被毒され、触媒活性が著しく低下するという問題点があり、一酸化炭素に耐性のある触媒の開発は燃料電池の分野において重要な課題となっている。

そこで研究グループは、「自然界のH2酵素とCO酵素の機能を融合した新しい触媒」を開発し、この触媒を用いて「水素と一酸化炭素が50対50の比率の燃料で燃料電池が駆動する」ことを見出した。反応途中の触媒構造は、X線解析で明らかにしたという。この成果は、燃料電池の分野において格段の発展と波及効果をもたらす可能性があると説明している。

また、研究者の小江主幹教授は、次のように述べている。『自然界の2つの酵素(H2酵素とCO酵素)からヒントを得て、「COから触媒を保護する」という発想ではなく、「COもH2と同じように燃料(電子源)として使用する」ことを考えました。自然界を手本にした設計のため、環境に優しく、反応は「水中」で行います。』

なお、同研究は、文部科学省科学研究費補助金・特別推進研究「ヒドロゲナーゼと光合成の融合によるエネルギー変換サイクルの創成」の研究の一環として、同研究グループが、九州大学大学院工学研究院、小分子エネルギーセンター、I2CNER、JNC、福岡市産学連携交流センターで行われた。