IDC Japanは6月2日、国内IT市場における産業分野別および企業規模別の2017年~2021年の市場規模予測を発表した。これによると、ほとんどの産業分野でプラス成長を予測し、小売、情報サービス、運輸/運輸サービスでは2%台後半の比較的高い成長率を見込んでいる。

2017年の国内IT市場規模は14兆9891億円で、前年比成長率2.0%を予測。国内経済は一部地域で回復が遅れているため、システム刷新、新規開発を抑制する企業は依然として多いとみているが、このような状況においてもスマートフォン分野で需要拡大が見込まれることから、2017年のIT支出全体はプラス成長を予測している。

国内IT市場 支出額予測、2016年~2021年

今後、2020年の東京オリンピック/パラリンピック開催を控えて多くの企業で投資の活性化が見込まれることに加え、2020年1月のWindows 7のサポート終了に伴うPCの更新需要や、2019年10月に延期された「消費税増税」対応を目的に関連システム刷新、改修が見込まれていることから、2019年までは高い成長率を予測している。

しかし、2020年以降は前年までの積極的なIT支出の反動により、国内IT市場全体で1%未満の低い成長率に留まると想定している。

産業分野別に見ると、2017年は通信分野以外の各産業分野においてプラス成長を見込んでおり、特に大都市圏を中心にオムニチャネル戦略への投資のほか、人材不足解消のための業務効率化を目的とした投資も拡大する小売業、日本郵政の大型IT投資や訪日外国人の増加への対応が進む運輸/運輸サービス、専門的サービス、個人向けサービスにおいて、2%台の成長率を予測。

また、電力およびガスの小売自由化に伴うシステム刷新や新規導入が見込める公共/公益などにおいても堅調に拡大を見込み、これらの産業分野はいずれも予測期間中プラス成長を想定してる。一方で、大型案件が終息に向かっている銀行など金融業、不透明な海外経済状況の影響を受ける製造業では、IT支出はプラス成長を維持するものの、比較的低い成長率に留まると推測している。

国内IT市場は、2017年以降プラス成長で推移すると見込んでいるが、2020年以降は低い成長率に留まると予測していることから、ITサプライヤーは中長期的に国内IT市場を堅調に拡大させるためには、ユーザー企業に対して新しい分野でのIT支出を促進することが求められているという。

同社のITスペンディンググループのリサーチマネージャーである市村仁氏は「ITサプライヤーは、ユーザー企業にIT活用の有効性の認識を促進させるために、人材不足を解決する業務効率化を図るソリューションなどメリットを実感しやすいソリューションを積極的に提案することが重要である」と述べている。