京セラは、超小型で長い通信距離を実現するRFIDアンテナ内蔵セラミックパッケージを開発し、5月より本格量産を開始すると発表した。
同製品は、独自のセラミック多層構造によって、超小型で長い距離の通信を確保したRFIDアンテナ内蔵セラミックパッケージ。RFIDは、RFIDタグに埋め込まれたICチップの情報を親機となるリーダー/ライターと送受信する技術で、現在、小売業での製品タグや交通系ICカードなどで採用が広がっている。同製品には、低温で焼成されたセラミックス「LTCC」が使用されており、アンテナとして最適な抵抗値の低い銅を導体に用いているため高周波特性に優れている。また、ファインセラミックスならではの耐熱性・耐水性・耐薬品性などの高い耐久性を持つと同時に、同社の技術により、高温で焼成されたセラミックス「HTCC」と同等の曲げ強度を有している。
同製品は、ICチップをパッケージの内部に配置できるキャビティ(凹型)構造により、小型化を実現している。RFIDタグは通常、パッケージが小型になるほどアンテナの面積も小さくなり通信距離が短くなるが、同製品は薄型多層構造を採用し、効率的なアンテナ設計を行うことで、通信距離を延伸。UHF帯(860-960MHz)の通信方式において、同製品を採用したRFIDタグはUHF帯の通信距離測定において、他材料を採用した従来タグに比べて、体積比で1.5~2倍の通信距離を実現しているという。また、一般的なシール状のタグは金属の製品に貼り付けると、RFIDタグとの通信が不可能になってしまうが、同パッケージを採用したRFIDタグは、金属に貼り付けた際に通信距離が最大となるアンテナ設計が行われており、自動車、産業/FA、医療などの金属製品の管理用途に適している。
同製品はUHF帯だけでなく、超近距離通信のHF帯(13.56MHz)の通信方式に対応した製品もラインアップされており、UHF帯とHF帯の通信方式向けに、それぞれ3サイズ(6×3×1.7mm/10×5×1.7mm/15×5×1.7mm)の計6種類が展開されている。そのほか、セラミックパッケージの供給だけでなく、内蔵するICチップの手配や、セラミックパッケージへのICチップの実装、さらにユーザーの仕様に合わせたRFIDタグ(完成品)での供給も可能だということだ。