産業技術総合研究所(産総研)は11日、同集積マイクロシステム研究センター社会実装化センサシステム研究チーム 小林健研究チーム長、同センターウエアラブルIoT研究チーム山下崇博研究員が大日本印刷(DNP)と共同で、橋梁のひずみ分布をモニタリングするセンサーシートを開発したことを発表した。この成果の詳細は、4月12日にコクヨホール(東京都・港区)で開催される「FLEX Japan 2017」のMEMS and Sensor Sessionにて報告される。
橋梁の劣化状態を把握するためにセンサーでひずみ分布をモニタリングするには、光ファイバー式や箔ひずみゲージを使う方法があるが、前者は敷設コストが高く、後者は消費電力が大きいうえ、フレキシブル基板や接着材の屋外耐久性が低く施工方法が煩雑といった課題がある。
このたび研究グループは、MEMS技術により極薄化したシリコンセンサーや回路チップをフレキシブル基板上に集積化する技術により、圧電MEMS技術で作製した極薄PZT/Siひずみセンサー(長さ5mm、幅1mm、厚さ3μm)をフレキシブル基板上に配置し、保護フィルム、接着フィルムと一体化したフレキシブル面パターンセンサーを開発した。
今回、阪神高速道路株式会社の協力を得て、実際の高速道路橋にフレキシブル面パターンセンサーを複数枚施工し、アンプ・通信モジュールを接続して測定したところ、車両通過に伴う橋梁の変形をひずみ分布としてモニタリングできたという。このように、橋梁の動ひずみ分布を継続してかつ常時モニタリングできれば、橋梁の劣化状態を把握でき、橋梁の健全性評価や効率的な点検を行えるようになるとしている。
なお、今後は、高速道路橋にフレキシブル面パターンセンサーを貼り付けて、ひずみ分布測定と屋外耐久性評価を行うとともに、補修・補強した橋梁の経過観察の実証試験を行うという。また、新たに開発された極薄シリコン・フレキシブル基板実装技術をアンプやマイコンなどの回路チップにも適用し、信号処理・通信モジュールをフレキシブル基板上に集積化するハイブリッドエレクトロニクス技術の開発を推進するということだ。さらに、大判の基板を用いることによる低コスト化についても検討を進めていく方針だという。