NEDOは、大崎クールジェンを助成先として、究極の高効率石炭火力発電技術の確立を目指す石炭ガス化燃料電池複合発電(IGFC)実証事業「大崎クールジェンプロジェクト」の第1段階として酸素吹石炭ガス化複合発電(IGCC)の実証試験を開始した。実施期間は、2017年3月28日~2019年2月28日。

石炭ガス化燃料電池複合発電(IGFC)実証事業の概要

同実験は、エネルギー効率的に優れているとされている酸素吹IGCCの実用化に向けた、石炭火力システムとしての性能や運用性、信頼性、経済性等の実証のために行われるもの。NEDOは、石炭火力発電から排出される二酸化炭素(CO2)を大幅に削減するため、低炭素石炭火力発電の実現を目指す「石炭ガス化燃料電池複合発電(IGFC)実証事業」に取り組んでいる。同実証事業は、第1段階の「酸素吹IGCC実証」、第2段階の「CO2分離・回収型酸素吹IGCC実証」、第3段階の「CO2分離・回収型IGFC実証」で構成され、大崎クールジェンが実施主体となって、中国電力株式会社の大崎発電所構内に実証試験設備を建設し、2015年度から試運転を進めてきた。

実証試験目標

同実証試験では、ガス化炉で石炭粒子をガスにして1300℃級のガスタービンを動かすと同時に、そこから発生する熱を利用して蒸気タービンを動かして複合的に発電し、石炭火力システムとしての性能や運用性、信頼性、経済性についての実証を実施し、1300℃級ガスタービンを適用した酸素吹IGCCにおいて送電端効率40.5%(高位発熱量基準)の達成を目指す。この目標を達成することで、1500℃級ガスタービンを採用する商用機(石炭処理量2,000~3,000t/d)で送電端効率約46%達成のめどが得られるという。

実証試験スケジュール

同実証試験の目標を達成することで、第1段階終了後となる2020年頃には、1500℃級ガスタービンを採用する商用機(石炭処理量2,000~3,000t/d)で送電端効率46%~50%(高位発熱量基準、現状40%程度)、CO2排出原単位650g-CO2/kWh程度(現状より20%程度削減)を達成のめどが得られる予定となっている。また、第2段階CO2分離・回収型IGCC実証(2016~2020年度)は、2019年度中の実証試験開始を目指し、現在、試験設備のプロセスや構成機器の仕様、工事計画などの各種検討が進められている。この段階では、酸素吹IGCCにおいて、CO2回収時のエネルギーロスによる発電効率の低下という課題に対し、CO2を90%回収(全量ガス処理)しながらも、現状の微粉炭火力と同等レベルである送電端効率40%程度(高位発熱量基準)を達成する見通しを得ることが目標となる。さらに、第3段階(2018~2021年度)として、CO2分離・回収型IGCC設備に燃料電池を組み込んだCO2分離・回収型IGFCの実証事業が計画されている。その後の大型化および商用機に向けた技術開発、別事業のガスタービン燃料電池複合発電の技術開発等の成果を活用して、2025年頃の大型IGFCの技術確立を目指し、送電端効率55%(高位発熱量基準)、CO2排出原単位590g-CO2/kWh程度(現状より30%程度削減)を達成する見通しを得ることが目標になるということだ。