紅茶や緑茶が認知症リスクを低減するとの研究が報告された

内閣府によると、2012年に462万人だった認知症の高齢者は、2025年には700万人まで増加すると見込まれている。超高齢社会の日本においては、今後さらに認知症患者が増加の一途をたどることが予想される。若年性認知症もあるだけに、中高年も我が事としてとらえておく必要がある。

認知症をはじめとする多くの病気を予防するにあたり、食事を充実させることの重要性が叫ばれているのは周知の事実だ。認知症に関しても、これまでに有効な飲食物がいくつか報告されている。

そして今回、私たち日本人になじみのある物が認知症予防に有効との可能性を示唆する研究が報告された。海外のさまざまなニュースを伝える「MailOnline」にこのほど掲載された「認知症リスクを低減するお茶の作用」に関するコラムの内容を紹介しよう。

茶葉にはカテキンやテアフラビンといった化合物が豊富に含まれており、抗炎症作用と抗酸化作用がある。シンガポール国立大学のフェン・レイ博士によると、このような化合物が血管損傷や神経変性から脳を保護するのに役立つかもしれないとのこと。

研究者グループは12年以上にわたり、55歳以上の957人を対象にお茶の消費に関する追跡調査を実施。2年ごとに認知機能を調べつつ、ライフスタイルや健康状態、身体活動に関する情報も収集した。

その結果、一日1杯のお茶を飲むと認知症リスクが50%低減し、「認知症遺伝子」を持っている人を対象とした場合、最大で86%も低減することが判明した。緑茶でも紅茶でも、脳に対して同じ効用があるという。

「私たちの研究データから言えることは、毎日お茶を飲むという簡単でお金のかからないライフスタイルによって、高齢になった際に神経認知障害を発症するリスクを低減できるということです」とレイ博士は語る。

さらに「私たちの研究成果は、認知症予防に重要な意味があります。高品質の薬剤治験にもかかわらず、認知症のような神経認知障害に対する効果的な薬理学的な治療はなく、現時点での予防策は到底満足できるものではありません」と続ける。ただ、結論を確定するためにはさらに多くの研究が必要だとの見解を示している。

ちなみにこの研究が発表される少し前には、コーヒーを一日3杯飲むと認知症リスクが低減するという研究結果が発表されていた。カフェインを適度に摂取すると、アルツハイマーに関係があるとされている有毒な塊が脳内で作られるのを予防する効果があるという。

国立がん研究センターも緑茶とコーヒーを定期的に摂取すれば、すべての原因における死亡リスクや心疾患による死亡リスクが低減すると発表している。この2つの飲料は毎日の食事に取り入れたほうがよいのかもしれない。

※写真と本文は関係ありません


記事監修: 杉田米行(すぎたよねゆき)

米国ウィスコンシン大学マディソン校大学院歴史学研究科修了(Ph.D.)。現在は大阪大学大学院言語文化研究科教授として教鞭を執る。専門分野は国際関係と日米医療保険制度。