マウスの切歯が伸び続けるメカニズムを解明‐歯の再生への応用に期待

東北大学は、マウスの切歯(前歯)が伸び続けるメカニズムを解明したと発表した。

ネフロネクチン発現抑制実験の結果の模式図。

器官培養においてネフロネクチンの発現を抑制すると、優位に Sox2 陽性細胞の増加が認められる。

同研究は、東北大学大学院歯学研究科小児発達歯科学分野の福本敏教授らのグループと、九州大学大学院歯学研究院の吉崎恵悟助教との共同研究によるもので、3月27日に英科学雑誌、Scientific Reports誌電子版に掲載された。

ヒトの歯は、乳歯および永久歯ともに妊娠期間中にその形成がスタートし、口腔上皮の一部がエナメル質を形成するエナメル芽細胞に分化することで歯の形成が行なわれる。歯の形成の初期段階においては、歯胚内にSox2陽性の上皮幹細胞が存在しており、この細胞が分裂することで細胞数が増加し歯が大きくなるが、このSox2陽性細胞は、歯の発生過程において消失してしまうため、ヒトの歯は一度形成されると、二度と再生することはない。一方、マウスなどのげっ歯類の切歯(前歯)は、Sox2陽性の上皮幹細胞が歯の根元の部分に存在し、この細胞がエナメル質を形成する細胞を一生涯供給し続けるため、歯が磨耗し削れても伸び続けることができる。

同研究チームは、歯の発生に関わる分子群の網羅的な解析から、細胞外マトリックスのひとつであるネフロネクチンが、歯の発生段階に強く発現していることを見いだした。歯の発生の初期段階においては、マウスの切歯および臼歯のどの歯胚においても、Sox2陽性の幹細胞が存在している。ネフロネクチンは、このSox陽性細胞においては発現が認められず、またネフロネクチンが発現している上皮細胞において、Sox2の発現が消失していることを見いだした。また、一生涯伸び続けるマウスの切歯の根元の部分において、Sox陽性細胞が多く存在している領域が存在しているが、Sox2陽性細胞から分化した細胞の領域においては、ネフロネクチンが発現し、それと同時にSox2陽性細胞が消失していた。このことから、ネフロネクチンが、Sox2発現を制御している可能性が示唆された。

そこで、臼歯歯胚の器官培養技術を用いて、ネフロネクチンの遺伝子発現を抑制すると、本来Sox2が発現していない領域においても、Sox2陽性細胞が認めらた。また、ネフロネクチンが、どのような分子機構でSox2の発現制御を行なっているか検討した結果、ネフロネクチン蛋白の前半部分に存在するEGF類似領域を介して、EGF受容体を活性化し、その下流分子であるAktを活性化することでSox2の発現を制御していることが明らかになった。このようなネフロネクチンのSox2発現制御に関しては、他の細胞外マトリックスである I 型コラーゲン、ラミニン、フィブロネクチンでは認められなかった。このことから、ネフロネクチンは、Sox2陽性細胞からエナメル質形成細胞への分化を特異的に制御しており、マウス切歯の根元でのネフロネクチン発現が無いことが、歯が伸び続けることを可能にしていることが示唆された。

この研究成果により、歯の再生に必要な上皮幹細胞の大量調整と分化誘導が可能となることが期待され、歯の再生技術の開発に大きく貢献することが期待されるということだ。



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