京大、ロボットポンプでヒトの赤血球変形の時間スケールを解明

京都大学(京大)は2月27日、ヒト赤血球細胞への変形負荷の時間を精密制御することで、細胞内部の細胞骨格が負荷に応じて再構成する新たな時間スケールを発見したと発表した。

同成果は、京都大学物質-細胞統合システム拠点 田中求特定拠点教授、大阪大学 金子真教授、名古屋大学 新井史人センター長らの研究グループによるもので、2月24日付けの英国科学誌「Scientific Reports」に掲載された。

赤血球は毛細血管や臓器のなかで無数の変形を繰り返しながら全身を巡っている。これまでに毛細血管を模したマイクロ流路を用いてその変形能を評価する試みはあったが、微小な流路トンネルの内部で赤血球への変形負荷強度を制御することには、計測を素早く行うほど得られる情報が少なくなるなどといった技術的な課題があった。

今回、同研究グループは、マイクロ流路にロボットポンプを接続したシステムを用いて変形時間を自在に制御することで、高速な計測を行いながら、新たな変形能の特性を引き出すことに成功。10ミリ~30万ミリ秒の広い時間範囲でさまざまな変形負荷を与え、従来知られていた100ミリ秒程度の速い形状回復と数10分程度の極端に遅い形状回復のあいだに位置する、10秒程度の遅い形状回復が存在することを発見した。

また、この遅い形状回復は180秒程度の変形負荷時間をかけたときに得られ、細胞の変形能を激変させる。この変形負荷時間は、内部構造である細胞骨格の働きに特徴的なATP依存性を示すことから、変形しているひとつの細胞内での細胞骨格の組み換わりに由来する時間スケールであることがわかっている。さらに、この時定数が、敗血症因子を作用させた赤血球では異常化し、健康な赤血球とは異なる時定数へとシフトすることも明らかになった。

同研究グループは今回の成果について、敗血症をはじめ血液の関係するさまざまな病気で見られる赤血球の変形能異常を高速かつ定量的に検出できる新しい力学的診断法への応用が期待されると説明している。

ロボットポンプを接続したマイクロ流路。高速カメラと高速アクチュエータが連動し、流路内を流れる赤血球を操作する。流路中に設けた狭窄部内に細胞をとどめ、変形させる (出所:京大Webサイト)



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