京都大学(京大)は2月1日、生育初期のダイズ株に草刈り由来の雑草の匂いを暴露すると、その後の株の防衛能力が向上すること、さらに種子のイソフラボン量が増加することを明らかにしたと発表した。

同成果は、京都大学生態学研究センター 高林純示教授、小澤理香研究員、龍谷大学 塩尻かおり講師、バイエルクロップサイエンス 山下賢一技術顧問らの研究グループによるもので、1月30日付けの英国科学誌「Scientific Reports」に掲載された。

傷を受けた植物の匂いが近くに生えている傷を受けていない植物の防衛能力を高めるという「植物間コミュニケーション」という現象は、1980年代より指摘されてきており、2000年に実証された。その後も海外のさまざまな研究組織でその実態解明が進められている。しかし、これらの研究の多くは実験室内で行われており、野外での実証はデザートセージの研究などごく少数に限られていた。

今回、同研究グループは、ダイズ畑のなかにセイタカアワダチソウを裁断しネットに入れたものを設置。ダイズ生育初期の2~3週間のみ草刈りの匂いに触れさせるという実験を行った。この結果、成長期の時点で、未処理区に比べて処理区では葉の被害が少なく、また収穫時の害虫によるダイズ種子の被害も減ったという。したがって、短期間の草刈り由来の匂い経験が、その後のダイズ株の生育・繁殖に影響しているものと考えられる。

さらに、収穫したダイズ豆中のイソフラボン類の量が増加していることもわかった。これは、植物間コミュニケーションにおける親から子への影響を示した結果であり、植物間コミュニケーションが、同世代個体間ばかりでなく世代間にも影響していることが示唆された。

同研究グループは、草刈り由来の匂いが野外でこのような生態機能を有することは、これまでの草刈りに対する認識を大きく変えるものであるとしており、さらに害虫管理への応用という面でも新しいシーズになる可能性があるとコメントしている。

今回の研究の概要 (出所:京都大学Webサイト)