花王と早稲田大学(早大)は1月11日、睡眠時間の短縮が、食欲抑制ホルモンの減少や空腹感の増加などの食欲に影響し、肥満リスクを増加させるメカニズムを解明したと発表した。

同成果は、花王 ヘルスケア食品研究所と早大スポーツ科学未来研究所の共同研究グループによるもの。詳細は、英国Nature Publishing Groupの電子ジャーナル「Scientific Reports」に掲載された。

ヒトの睡眠について、これまでの研究から睡眠時間が短いと肥満のリスクが高まることは知られていた、そのメカニズムについては良く分かっていなかった。そこで研究グループは今回、睡眠時間を半分にする生活がヒトのエネルギー代謝に及ぼす影響について、平均年齢23.2歳(平均BMI22.2)の健康な男性9名を対象として研究を行ったという。

具体的には、決まった食事の生活をする中で、2週間の休止期間を挟んで、「3日間7時間睡眠を行ない、3日目の7時間睡眠および翌日の回復睡眠を含む48時間、代謝への影響を部屋型の代謝測定装置であるメタボリックチャンバーで測定」という試験と、「3日間3.5時間睡眠を行ない、3日目の3.5時間睡眠および翌日の回復睡眠を含む48時間、代謝への影響をメタボリックチャンバーで測定」という試験をランダムな順番で実施。その結果、睡眠時間の短縮は、夜間のエネルギー消費量が増加したが、1日のエネルギー消費量や脂質利用量には影響を与えないこと、3日間の睡眠時間の短縮には食欲抑制ホルモンであるPYYの減少や、1時間ごとに測定された空腹感の増加などの食欲への影響が生じること、直腸で測定された深部体温は、睡眠時間の短縮によって有意に低下し、深部体温の日内リズムに影響すること、などが判明したという。

2つの試験条件の比較結果 (出所:発表論文より抜粋)

なお、今回の成果について研究グループでは、これまでに議論されていた、睡眠時間の短縮がなぜ肥満リスクを増加させるのかという問いに対して、エネルギー代謝の面からの生理学的メカニズムの1つを提供したものとなるとコメントしているほか、花王では、今後も、メタボリックチャンバーを活用して、ほかの研究機関と協働で、日常生活がヒトのエネルギー代謝に及ぼす影響について研究を深めていくとしている。