伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)は12月9日、農作業者の健康・労務管理や生産性の分析を実現するIoTソリューションを開発したと発表した。農作業者が身に付けたセンサーから動作や身体の状態に関するデータを取得し、作業者ごとの健康・労務管理を行うほか、取得データと作業記録との相関分析により、働きやすさや生産性の向上を目指す。

「DataSpider Cloud」が提供する価値

同社では8月~9月にかけて京丸園の浜松農園で健康・労務管理IoTソリューションのトライアルを実施。トライアルでは、CTCの特例子会社である、ひなりの社員が農作業者として協力した。

開発した健康・労務管理IoTソリューションは、農作業者の動作や身体の状態に関するデータを取得し、健康・労務管理を行うソリューション。作業記録と連動し、生産性の向上につながる作業計画の分析や生産量の予測も提供する。

センサには、富士通のIoT製品「FUJITSU IoT Solution UBIQUITOUSWARE(以下、ユビキタスウェア)」の「ユビキタスウェア センサーアルゴリズム(以下、センサーアルゴリズム)」「ユビキタスウェア バイタルセンシングバンド(以下、バイタルセンシングバンド)」「ユビキタスウェア ロケーションバッジ(以下、ロケーションバッジ)」を活用。

バイタルセンシングバンドは、熱ストレスや転倒・転落を遠隔で把握でき、ロケーションバッジは位置情報を把握するツール。バイタルセンシングバンドは、データ取得に加え、事前に設定した通知条件で管理者にアラートを自動通知する機能もあり、休憩の促進や事故発生時の迅速な対応に備えることができるという。

実証内容はユビキタスウェアの動作検証としてシフト管理表や業務日誌、収穫実績などの作業記録データとセンサデータとの相関関係の分析による業務効率化や生産性の向上との関連性の検証を行い、実施対象は現場管理者4人と作業者12人の計16人。取得したデータは身体姿勢検知、転倒検知、歩数などの動作データ、パルス、身体負荷、熱ストレスといった身体データ、位置情報、移動軌跡をはじめとしたロケーションデータとなる。

実施結果は、センサからのデータ取得と、熱ストレスや身体負荷などによるアラートの自動通知の有無、作業内容、作業経過時間、連続勤務日数、身体負荷や熱ストレスとの相関関係を確認した。ストレスのかかる作業や適切な作業配分、作業連続作業における休憩取得のタイミング、連続勤務日数の限度などについて個人ごとに算出しており、センサデータ、業務データに加え、気温・日照時間・湿度などの環境データを用いた機械学習により、農作物の生育量予測モデルを構築している。

今後、CTCではトライアルの対象施設を拡大し、農作業者の安全管理と作業の効率化を目指すソリューションの提供を2017年度に開始する予定だ。データの蓄積を通して農作物の生産量を予測する機械学習の精度を高め、ソリューションの改善を継続するとともに、農作業におけるITの活用で新たな市場を開拓し、将来的には健康・労務管理を課題とする農作業以外の業態への展開も目指す方針だ。