岡山大学などは10月18日、地球内部で最も多く存在する鉱物「ブリッジマナイト」の結晶選択配向を実験により解明し、沈み込んだプレート近傍の地球下部マントルの流れる方向を明らかにしたと発表した。

同成果は、岡山大学惑星物質研究所 辻野典秀JSPS特別研究員(PD)、山崎大輔准教授、愛媛大学地球深部ダイナミクス研究センター 西原遊准教授、神戸大学大学院理学研究科惑星学専攻 瀬戸雄介講師、高輝度光科学研究センター 肥後祐司研究員、東京工業大学理学院 高橋栄一教授らの研究グループによるもので、10月17日付けの英国科学誌「Nature」に掲載された。

これまでの地球物理学的な観測によって、沈み込んだプレートであるスラブ周辺では、下部マントルにおいてS波の地震波速度の異方性が確認されている。この原因として、下部マントルの77%の体積を占めるブリッジマナイトのせん断変形による結晶選択配向が考えられるが、実験が困難であることから、地震波速度の異方性の原因は未解決の問題となっていた。

同研究グループは今回、25万気圧、1600℃という下部マントル上部の条件下においてせん断変形実験を実施。変形に伴うブリッジマナイトの結晶選択配向を明らかにした。また、この結果とこれまでに報告されているブリッジマナイトの弾性定数を組み合わせることで、下部マントルでのスラブ近傍で観測されている地震波速度異方性が、スラブに沿った変形によって説明できることを示した。

今回の成果について、同研究グループは、地震波異方性が確認されている領域の流れ場を明らかにすることができ、火山や地震に影響をあたえるマントルダイナミクスに重要な知見を与えることが期待されるとしている。

ブリッジマナイトの結晶構造

トンガ・ケルマデックスラブ近傍の地球マントルの内部構造