アクセンチュア 執行役員 金融サービス本部 統括本部長 中野将志氏

アクセンチュアは10月6日、国内の金融機関向けに、人工知能(AI)・ロボティクス領域の専門チームを創設し、独自開発したツールを用いて、RPA(Robotics Process Automation)の適用余地診断から実装までトータルで支援するサービスを提供すると発表した。

RPAとは、AIやロボット技術を活用して、人間が行っている作業を代わりに処理するオペレーション自動化の仕組み。

執行役員 金融サービス本部 統括本部長 中野将志氏は、今回の取り組みを実施する背景について、「日本の金融機関は、規制強化、マイナス金利による資金運用難、頻繁な合併・統合によるオペレーションの複雑化などに対応することが求められており、業務の効率化が求められている。われわれは、AIとロボティクスを導入することで、こうした課題の解決を支援していくことを目指す」と説明した。

実際、国内の金融機関から同社に対し、PoC(Proof of Concept:概念実証)の依頼が複数あるなど、国内の金融機関がAIに対し興味を持っていることを中野氏は肌で感じているという。

同社はAI・ロボティクス分野の取り組みとして、「AI・ロボティクス金融サービス専門チームの立ち上げ」「RPAの診断・導入サービスの提供」「海外視察サービスの提供」を行う。

AI・ロボティクスチームは組織横断的に構成され、現時点で、専任メンバーは15人程度だという。

アクセンチュアのAI・ロボティクス分野における取り組み

アクセンチュア 金融サービス本部 マネジング・ディレクター 下野崇氏

RPA関連のサービスの詳細については、金融サービス本部 マネジング・ディレクターの下野崇氏が説明した。

下野氏は、「日本では高度なAIに注目が集まっているが、グローバルでは条件を判断しながら、データの収集・加工・自動入力・チェックを行うRPAの検討・導入が活発化している。われわれは海外で多数の導入実績があり、日本では遅れているRPAに取り組んでいきたい」と、RPAの導入を支援するサービスを提供する理由を述べた。

RPAは、何らかの判断や簡易の意思決定を伴った入力オペレーション技術であり、ワークフローの構築は人間のオペレーション作法をもとに設定するため、複雑なプログラミングを必要としない。オペレーションは自動化されており、常時稼働が可能であるうえ、作業の正確性と効率性を向上することが可能だという。

つまり、RPAは「人間と同じ作業を正確かつ効率よく、24時間行うことが可能」(下野氏)であり、その結果、生産性が向上するというわけだ。

下野氏は、同社が提供するサービスでは、これまで人間がPCで行っていた作業のうち、ルール化できるものを自動化することができると述べた。ちなみに、金融機関の従業員がPCでやっている業務の50%をルール化することが可能だという。

RPA導入による効果としては、「高品質」「生産性の飛躍的な向上」「事務コストの削減」「短期間での実装」が紹介された。同社が支援した数十の金融機関に対するRPAプロジェクトでは、50%以上の事務量の削減が実施されているそうだ。

RPA導入に期待できる主な効果

「RPA診断/導入サービス」では、「診断」「コンセプト検証(PoC)」「パイロット」「実装」という4つのステップに従って、RPAの導入が進められる。診断フェーズでは、自動化の可能性を識別する独自のツールが用いられる。

RPA診断/導入サービスの概要

診断フェーズで業務の自動化の余地を識別するツールが利用される

さらに、欧米の金融機関におけるRPA導入プロジェクト、アクセンチュアの関連視察のサービスを提供することで、日本の金融機関が最新の情報を入手し、RPAに取り組むことを支援する。