NECは10月3日、電波の利用状況を計測してリアルタイムに可視化する電波環境センシングシステムを開発したと発表した。

近年のトレンドである無線通信の大容量化・大規模化、IoT機器の増加などにより、電波の利用需要は今後高まっていくと予想されている。需要の増加により、割り当て可能な無線周波数帯域が不足すると、膨大な数のIoTセンサからの情報収集や、イベン時や災害時に必要な無線通信が滞ってしまう。周波数枯渇時の無線通信の障害を回避し、安定的な無線通信を実現するためには、さまざな場所で刻々と変化する空き無線帯域を切り替えて利用する必要がある。そのためには、電波がどのように使われているのかを調査し、利用されていない周波数を発掘する必要がある。

今回NECが開発したシステムは、小型の電波センサと電波状況を可視化するソフトウェアで構成される。同センサは、テレビ放送や携帯電話など主要な無線システムに適する30MHzから3GHzの周波数の中から、計測したい周波数の電波のみを抽出し、従来比約100倍の高感度で計測可能。また、計測したい電波とは異なる方向から来る電波を排除するとともに、計測したい電波を強めることで、強い電波を放射している送信局の近くでも、微弱な電波を高精度に計測できる。また、ソフトウェアは、今回開発した電波センサ間の電波状況を推定して補間し、計測したいエリアの電波状況を網羅的に可視化する。同システムにより、各地点における電波の強さの分布や時間帯を周波数ごとに実測し、リアルタイムに可視化することで、周波数の空き状況など実際の電波利用を確認することが可能となる。

周波数共用の全体イメージ

マイクロマシン応用可変フィルタ(左)と広帯域受信CMOS IC(右)

NECは今後、スタジアムや駅・空港などの人口密集地での電波環境のモニタリング、無線設備の最適配置や運用計画の立案、周波数管理や不法電波の監視などでの応用を目指し、2020年に向けて実用化を進めるとしている。