東京メトロ、東武鉄道、佐川急便、日本郵便、ヤマト運輸の5社は29日、既存の鉄道施設を活用した物流実証実験を共同で実施すると発表した。旅客輸送を行わない実験専用ダイヤを設定し、9・10月に計10回の運行を予定している。
鉄道・物流5社が参画する今回の物流実証実験は、昨年12月の社会資本整備審議会・交通政策審議会でも触れられたという「旅客鉄道の輸送力を活用した貨物輸送」に関するもので、交通渋滞やトラックドライバー不足、CO2排出量の削減など、物流に関する社会的課題の解決策のひとつと想定されている。「拠点間輸送」「拠点~駅間輸送」の2パターンで実験を行い、ともに東京メトロの車両10000系を使用する。
「拠点間輸送」の実験は5社で実施し、東京メトロの新木場車両基地へ、物流各社の拠点からトラックで模擬荷物(実際の荷物の重量を模したダンボールなど)を搬入。10000系の1両に模擬荷物を積載し、実験専用ダイヤで東京メトロ有楽町線・東武東上線を走行する。東京メトロの和光車両基地または東武鉄道の森林公園検修区に到着した後、列車から荷物を下ろし、トラックで物流拠点へ搬出する。
「拠点~駅間輸送」の実験は東京メトロ・ヤマト運輸・佐川急便の3社で行う。新木場車両基地へトラックで模擬荷物が搬入され、これを積んだ10000系が実験専用ダイヤで有楽町線を走行。新富町駅・銀座一丁目駅・有楽町駅の各駅で、到着した列車から模擬荷物(台車1台程度)を下ろし、駅構内を経由して地上へ搬送する。
実験は9月9・10・16・17・30日と10月1・7・8・14・15日の計10回実施され、各日1本ずつ運行される予定。実験の検証内容は「各作業工程における所要時間・人員数、安全性確保のための人員配置、作業効率性や安全性に資する機器、施設・設備等の必要性と規模、旅客輸送への影響」など。取得したデータや物流各社のニーズなどを勘案し、トラック輸送から旅客鉄道を活用した貨物輸送への転換(モーダルシフト)の実現可能性を検証するという。
今回、既存の鉄道施設を活用した物流実証実験を共同で行うにあたり、鉄道・物流5社は「鉄道を利用されるお客様の安全面および安定輸送の確保に最大限の注意を払い、万全を期して実験を行ってまいります」と発表している。