大阪市立大学は、将来の疲労の程度を予測する脳のメカニズムを発見し、同メカニズムが疲労の病態に深く関わっている可能性を明らかにしたと発表した。

同成果は、同大医学研究科の石井聡 病院講師、田中雅彰 講師、渡辺恭良 名誉教授(理化学研究所ライフサイエンス技術基盤研究センター長)らによるもの。詳細は「Scientific Reports」(オンライン版)に掲載された。

日本疲労学会は「疲労は過度の肉体的・精神的活動あるいは疾病により活動能力が低下した状態であり、疲労に伴う特有の感覚が疲労感である」と定義しており、健康な生活を送るためには、割り当てられた課題を一定の期間内に遂行しつつ、活動量を減らして過労を防ぐ必要がある。そのためには、将来の疲労の程度を予測する必要があるが、そうした研究はなかなか行われておらず、将来の疲労の程度を予測する脳のメカニズムは解明されていなかった。

今回研究グループでは、健康な男性16名(平均年齢21.9歳)を対象に、非侵襲的な脳機能測定方法である「脳磁図」を用いて、認知課題中とその1時間後の疲労の程度の予測評価を実施してもらったほか、別の日にも課題遂行中の疲労の程度を自己評価してもらった。予測評価と自己評価は被験者各自の頭の中で行われ、実験の直前にはChander疲労問診票にとる日常疲労の程度の評価も行ったという。

その結果、縁上回、背外側前頭前野、前頭極などの脳部位が将来の疲労の予測に関わっていることが示されたほか、日常疲労の程度が高い人ほど右側の背外側前頭前野がより強く活動している可能性が示されたという。

研究グループでは、慢性疲労症候群では右側の背外側前頭前野(9野)の体積が健常者に比較して減少している事が報告されており、今回の研究からは因果関係を明らかにすることはできないものの、疲労の程度の強い者に観察された背外側前頭前野の強い活動が同部位の障害をもたらす可能性を考えることができるとコメントしているほか、今後、新たな切り口による疲労の研究が進むことが期待でき、疲労の慢性化を防ぐための対処法の開発なども含め、将来の疲労の程度予測にしたがって適切に行動量をコントロールする脳のメカニズムの解明を進めていく必要があるとしている。

疲労の程度の予測に関わっている脳磁場活動