近年は、スポーツをしている女子にも脳震盪(のうしんとう)が増えているという

東邦大学医療センター 大橋病院脳 神経外科ではこのほど、女子のスポーツで起こる脳震盪(のうしんとう)の正しい知識とその対処法についての情報を公開した。

「脳震盪」は、激しい接触などによって脳に強い衝撃が加わったことによって発症する。主な症状は頭痛やめまい、ふらつき、力が出ない、集中できない、など。ラグビーや柔道など体を激しくぶつけ合う競技で起こりやすいことから、男子の方に目が向きがちだが、近年は女子の脳震盪も増えている。

接触などで発生した衝撃が脳に伝わらないようにするためには、体全体で衝撃を受け止めたり、首の筋肉の力で衝撃が頭部に及ぶのを食い止めたりすることが必要となる。しかし、女子は体の骨格が男子より弱く、頭部を支える頸部(けいぶ)の筋力が弱い。そのため、接触や転倒、飛び込みや殴打の機会の多いスポーツでは女子の脳震盪が多くなるという。

近年、オリンピックの競技が女子にも広がる中で、さまざまなスポーツで女子の競技者が増えている。それに伴って脳震盪発症のリスクも増大。特にサッカーやラグビーなど体と体の接触の多いスポーツ、柔道や空手といった武道・格闘技、飛び込みや落下により殴打する恐れのあるバレーボールや乗馬などは発症のリスクが高いという。

同院は、女子がスポーツでの脳震盪のリスクを減らすために大切なこととして「スポーツをやるための体幹(フレーム)づくりを行う」「体に行うスポーツに必要な強さをつけ、同時に柔軟性を養うこと」「トレーニングを通じて、けがをしない動作を体に覚えさせること」を挙げている。

また、「脳震盪の怖さ」として、発症を繰り返す癖がつきやすいことも挙げている。3回以上繰り返した場合には、癖がついている可能性が考えられるとのこと。繰り返すことで、軽い衝撃で頭痛やふらつきを自覚するようになるだけではなく、認知症や怒りやすくなるなどの性格変化を呈してしまう可能性も高くなる。

さらに、ひどい場合は重い障害が残ったり、頭蓋内の出血などが原因で死に至ったりすることもあるという。外見だけでは異常が確認できないため、病院でCTやMRIを取るなどの適切な処置を受けずに、そのままやり過ごしてしまうことが症状を重くする要因のひとつであると指摘している。

脳震盪は発症しても実際に意識消失するケースは少なく、9割以上は意識を失わないという。そのため、本人や周囲が脳震盪であると自覚・認識することなく、引き続き運動を継続してしまうことが多い。学校の体育や運動部、クラブ活動の関係者は、個々人の普段の状態との差がどの程度あるかをよく見極め、その変化を見逃さないことが重要となってくるとのこと。

もしも脳震盪を起こしたら、「まずは、練習や試合からすぐに外れ、当日は競技を行わないことが一番」と同院。その上で、できるだけ早く専門の医療機関で診断を受け、脳震盪が起こる原因を見つけ出すことが重要だという。運動再開には適切な回復期間を置き、徐々に運動負荷を上げていく段階的復帰を行うことが必要となる。

過去に脳震盪に対処した経験を持つ指導者や関係者は少なく、多くの場合はそのような経験がないままに症状の見極めや判断を迫られることとなる。同院では、「楽観的な判断をせずに、できるだけ早く専門の脳神経外科で受診することが大切」とアドバイスしている。

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