科学技術振興機構(JST)と京都大学(京大)は3月21日、高分子を構成する繰り返し単位(モノマー)の並び方を制御する手法を開発したと発表した。

同成果は、京都大学大学院 工学研究科 大内誠准教授らの研究グループによるもので、3月21日付けの英国科学誌「Nature Communications」に掲載された。

プラスチックや合成繊維、合成ゴムなどの材料として用いられる高分子は近年、導電性や薬理性、エネルギー変換性などの高度な機能を備えた機能性材料としての役割も大きくなってきている。しかし従来の機能性高分子は、材料機能を担う機能性基がランダムに配置され、材料内で平均的に分散するために、効率よく機能を発現させることが困難だった。機能性基の配列を狙いどおりに制御できれば、機能向上や新機能の発揮が期待される。

機能性基の配列制御の方法としては従来、鋳型上にモノマーをあらかじめ並べて重合する方法が考えられていたが、配列の制御された鋳型を合成するのが困難、鋳型の配列に沿って重合させるのが困難、側鎖官能基の種類に制約があるなどといった問題点があった。

同研究グループは今回、生成するビニルポリマーの長さ制御を可能にする連鎖重合であるリビング重合の一種「リビングラジカル重合」の機構をベースとした環化反応に着目。リビングラジカル重合法をベースに、希釈条件でラジカル種とビニルモノマー間の環化反応を制御し、さらにこの環化反応で生成する環状分子に対し、お互いに影響することなく切断と再生が可能な2種類の結合をあらかじめ導入しておくことで、環化反応、一方の結合の切断、再生によるビニル基の導入、という3ステップを繰り返し、配列の制御されたビニルオリゴマーを合成することに成功した。

同手法は、配列の制御された鋳型が不要で、鋳型を前進させることで付加反応を繰り返すことができ、切断に用いる分子が側鎖に導入されることでさまざまな側鎖官能基を導入できる可能性があるといった特徴がある。

同研究グループは、同手法により機能性基の配列が制御できれば、高分子を用いるエレクトロニクス材料、膜材料、医療材料などの機能向上が期待されるとしているが、同手法では一度に合成できる量が限られるという問題もあり、今後は高濃度でも反応を制御できる分子設計、反応プロセスを効率化するための分子設計が重要になると説明している。

鋳型上にモノマーを並べる手法(左)と今回開発された環化反応を繰り返す手法(右)