大阪府立大学と産業技術総合研究所(産総研)は3月16日、フォトリソグラフィ法を用いて100万以上のQ値を有する光ナノ共振器を作製することに成功したと発表した。

同成果は、大阪府立大学 工学研究科 高橋和 准教授と、産業技術総合研究所 電子光技術研究部門 森雅彦 研究部門長、岡野誠 研究員らの研究グループによるもので、3月22日に東京工業大学で開催される「応用物理学会」で発表される予定。

シリコンフォトニック結晶を用いた光ナノ共振器は、光を閉じ込める強さであるQ値において100万以上の値を実現しており、光を微小領域に強く閉じ込めることが可能。この特長を生かし、シリコンレーザーや光メモリ、超低消費電力シリコンラマンレーザーなど、さまざまな光素子が研究されている。しかし、これまでのQ値100万以上の光ナノ共振器はすべて電子線リソグラフィ法により作製されたもので、産業応用を実現するには、半導体製造で一般的なフォトリソグラフィ法を用いて大面積ウエハ上に一括作製することが求められていた。

今回、同研究グループは、産総研スーパークリーンルーム(SCR)の試作ラインを利用し、ArF液浸フォトリソグラフィ法により、30cmシリコンウエハー全面に光ナノ共振器のサンプルを高い精度で作製した。これまでに報告されているフォトリソグラフィ法で作製した光ナノ共振器の最高Q値は20万程度だったが、同サンプルでは平均で150万、最高で200万以上のQ値を得ている。今後、共振器構造と作製プロセスの最適化を進めることで、これ以上のQ値も期待できるという。

同研究グループは今後、オープンイノベーション推進拠点である産総研SCRにおいて、多くの研究者が高Q値光ナノ共振器を研究できる体制を整えていき、フォトニック結晶デバイスの早期実用化を推進していく予定であるとしている。

産業技術総合研究所スーパークリーンルームの外観(左)とフォトリソグラフィを行ったArF液浸フォトリソグラフィ装置(右)