富士通研究所は2月15日、異なる暗号鍵で暗号化したデータを復号することなく、一致・不一致の照合が可能な暗号技術を開発したと発表した。同社によると、世界初の技術だという。

同研究所は2014年に暗号化したままデータ検索が可能な秘匿検索技術を開発したことを発表しているが、暗号化に共通の鍵を使用していた。

今回開発技術は、富士通研究所がこれまでに考案した、暗号化された情報同士の一致の程度を計算する関係暗号理論に基づき、異なる暗号鍵で暗号化された文字列同士の照合判定を実現するもの。登録文字列および検索文字列を組織ごとに異なる暗号鍵で暗号化し、照合用のクラウドサーバ上で、暗号化したままそれぞれの組織の登録文字列ごとに検索文字列と一致・不一致の照合をすることができるという。

これらの文字列は、ハッシュ関数と同様の効果のある一方向性関数で暗号化しており、暗号化に用いた鍵を利用しても復号できないという。

異なる暗号鍵を用いたクラウドを利用した秘匿検索

同研究所は今回、照合結果を確認するための照合鍵を、情報の提供者、検索者ごとにクラウドに送信する固有の鍵(プレ照合鍵)から生成することで、クラウド上での照会可否を柔制御可能な技術も開発。これにより、照合結果も暗号化され、専用の照合鍵を持っている人だけが見ることができるという。

照合鍵の仕組み

同研究所では、今回開発した技術の利用例として複数の病院間での検査情報や診療記録の連携などにおいて、クラウド環境上で秘匿性を保ったまま複数組織の機微情報を安全に照合することを挙げており、医療以外にも、金融、教育、行政、マーケティング、特許調査など、これまでにプライバシー情報、企業秘密など情報漏えいに不安があった様々な検索シーンに適用でき、特に組織を超えて安全なデータ連携が実現できるとしている。

同研究所は、この技術のさらなる高速化やデータサイズの圧縮などを進め、2016年度内の実用化を目指すという。