帝国データバンクが12月14日に発表した「特別企画: 2016年の景気見通しに対する企業の意識調査」によると、2015年の景気は踊り場だったと見る企業が過半数を占め、2016年の見通しでも4割近くが踊り場になると見ているという。
同調査は同社が2006年11月から毎年実施しており、今回で10回目。今回の調査期間は11月16日~30日、調査対象は全国2万3,051社で、有効回答企業数は1万620社。
2015年の景気動向について尋ねたところ、回復局面だったとする企業は7.5%であり、2014年11月の調査とほぼ同水準だった。一方、踊り場局面だとする企業は54.8%で、2006年11月の調査以来、9年ぶりに5割を超えた。さらに、悪化局面だという企業は19.9%であり、2014年の調査から9.0ポイント減少した。
回復を実感する企業は1割弱で、悪化した企業を2年連続で下回ったが、2014年と比べて回復と悪化の差は-21.1から-12.4へと縮まっており、企業の景況感はやや明るさが表れていると同社は見る。一方で、踊り場だとの見方は半数を超えており、2015年の景気は弱含み傾向を示しつつ、横ばい状態で推移したと同社は分析する。
「回復」局面とみている企業からは「インバウンドの増大による国内消費の拡大により、観光産業を中心に景気回復局面にある」(経営コンサルタント、大阪府)や「建設工事には人手不足で強気の金額を出しても受け入れてもらえる状況が徐々に出来つつあり、好材料が増えてきている」(建設、東京都)など、訪日観光客の増加やコスト増の価格転嫁が進みつつあることを指摘する意見がみられたという。
しかし、「景気は回復傾向にあるが、ユーザー単位では良いところと悪いところで二極化しつつある」(鉄鋼・非鉄・鉱業、滋賀県)といった声も多く、業種や企業間で景気の回復度合いに格差が広がっている様子がうかがえるという。
「悪化」局面とした企業からは、「プレミアム商品券による消費喚起の恩恵もなく、都心のようなインバウンド効果もないので、前年売上・入店客数をクリアできない状況」(各種商品小売、栃木県)や「高価格商材の動きが若干良くなってきているが、低価格商材の値崩れがとどまる気配がない」(化粧品卸売、愛知県)などの声が挙がり、中小企業や地方にはアベノミクスの恩恵が届いていないと考える企業が多かったという。
2016年の景気の景気見通しを尋ねると、回復局面を迎えると見込む企業は11.3%であり、2014年11月の調査からは2.1ポイント減少した。悪化局面になると見込む企業が2014年11月の調査より減少した一方で、踊り場局面を見込む企業は4.0ポイント増加している。 企業の規模別で見ると、悪化と見通す企業の割合は小規模企業が大企業より9.8ポイント高く、規模の小さい企業ほど厳しい見通しを示しているという。業種別では小売で悪化と見通す企業の割合が3割を超えて回復より20ポイント以上高くなっており、個人消費関連の業種で特に厳しく見込んでいる様子が伺えるという。
2016年の契機に悪影響を及ぼす懸念材料を3項目以内の複数回答で尋ねたところ、中国経済が46.4%で最も高く、2014年11月の調査から33.3ポイント増加しており、中国の景気減速による影響を懸念する企業が企業規模や業界を問わず広がっていると同社は見る。
逆に、2014年11月の調査では2位だった「原油・素材価格(上昇)」は23.0ポイント減の24.7%、同じく1位だった「為替(円安)」は同31.1ポイント減の19.5%となっており、景気の懸念材料はこの1年で大きく様変わりしたという。また、「消費税制」は37.7%で2位、「人手不足」は25.6%で3位となっており、景気を左右する重要項目として上位に挙がっている。
景気が回復するために必要な政策を複数回答で問うと、個人消費拡大策が42.6%で2014年11月の調査に続いて4割を超え、4年連続で最多となったという。以下、所得の増加、法人向け減税、個人向け減税、年金問題の解決(将来不安の解消)が、それぞれ3割を上回った。実質賃金の伸び悩みが続く中で、今後の景気回復には個人消費の拡大と共に、企業の競争力向上として法人税など法人向けの減税策が重要な課題だと捉えていると同社は見る。 また、政府が成長戦略や「新三本の矢」に掲げている女性活躍で重要となる「出産・子育て支援」は23.3%で4社に1社、「介護問題の解決(老人福祉、介護離職など)」は19.1%で5社に1社が、今後の景気回復に必要な政策として挙げている。また、2014年11月の調査では9位に入っていた財政再建は7.7ポイント減少して11位に後退しており、企業がこれまでより景気に配慮した政策を求めている様子が伺えるとしている。