京都大学iPS細胞研究所(CiRA)は12月1日、本来は骨が出来てはいけない組織の中に骨ができてしまう進行性骨化性線維異形成症(FOP)の患者から作製したiPS細胞を用いた研究によってFOPの新たなメカニズムを発見したと発表した。

同成果は同研究所の日野 恭介 共同研究員、池谷真 准教授、戸口田淳也 教授らの研究グループによるもので、11月30日の「米国科学アカデミー紀要」で公開された。

FOPは筋肉や腱など通常は骨が形成されない組織の中に異所性骨と呼ばれる骨が徐々にできる疾患で、骨形成を司る増殖因子であるBMPの受容体の1つであるACVR1遺伝子に突然変異が生じて変異型ACVR1へと変化し、BMPシグナルを過剰に伝えることにより筋肉などに軟骨が形成され、それが骨になると考えられている。200万人に1人程度の割合で患者がいるとされる希少難病の1つで、発症に至る詳しいメカニズムはわかっていなかった。

今回の研究では、FOP患者から作製したiPS細胞(FOS-iPS細胞)を用いることで、通常は別のシグナルを伝達するアクチビンAというタンパク質が疾患細胞ではBMPシグナルを異常に伝達し、異所性骨形成を促進することを発見。また、FOS-iPS細胞から作製した間葉系間質細胞をアクチビンA発現細胞と共に免疫不全マウスに移植することで、患者由来細胞を用いた異所性骨形成モデルの作製に成功した。

FOP-iPS細胞由来間葉系間質細胞を用いた異所性骨モデル

同研究グループは、今回の結果についてアクチビンA阻害剤がFOP治療薬の候補となる可能性を示すものであるとともに、異所性骨形成モデルを用いることでFOPに対する薬剤の効果を生体で検証することが可能となり、治療薬のスクリーニングに役立つことが期待されるとしている。