慶應義塾大学は、同大学医学部内科学教室(循環器)の福田恵一教授、髙月誠司准教授らが、Appleの医学・医療研究および健康リサーチ向けに設計したオープンソース・ソフトウエアフレームワーク「ResearchKit」を利用して、国内で初めてiPhoneを用いた臨床研究を開始したことを明らかにした。

ResearchKitを使って木村雄弘特任助教が開発したアプリ「Heart & Brain」

ResearchKitを使って木村雄弘特任助教が開発した、不整脈・脳梗塞を早期に発見し、生活の質を守ることを目的とするアプリ「Heart & Brain」を利用して、Apple Watchが記録した心拍数のほか、歩数、運動量などのヘルスケアデータを収集、データを解析することで、病気の早期発見に結び付けられるかどうかといった検討を進めていく。

心房細動という不整脈は、脳梗塞のリスクを約5倍にする可能性が示唆されており、脳梗塞で入院した患者の5分の1に心房細動が潜んでいるとも言われている。心房細動が原因で起きる脳梗塞はしばしば重症であり、命に関わることが多いため、早期診断と早期予防が肝心なのだが、必ずしも症状を伴うとは限らないので、発見が困難な面がある。そこで、高機能なセンサーを搭載するiPhone、Apple Watchを利用し、ヘルスケアデータを収集する方法が採用された。

臨床研究には自由に参加することができ、被験者には、効率的な医学情報構築の可能性を評価するため、不整脈、脳梗塞のリスク、生活の質に関する質問票に回答してもらう。iPhone/Apple Watchのセンサーが日常集積したデータを解析し、脳梗塞検出に役立つ可能性のある運動評価検査も行っていくとのことだ。

なお、収集されたデータは、個人が特定できない形で保存され、機密保持に万全を尽くして取り扱われる。臨床研究データ解析以外の目的に使用されることもない。前述した通り、研究への参加は自由意思によるものなので、データ送信前であればいつでも研究への参加を中止することができる。研究協力への費用負担も発生しない。

本研究は国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の「循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策実用化研究事業」の支援によって行われている。「Heart & Brain」アプリの配布は既に始まっており、App Storeから無料でダウンロードできる。