日立製作所(日立)は11月12日、全固体リチウムイオン二次電池において放電性能の低下要因となる電池内の内部抵抗を低減する技術を開発したと発表した。

同成果は、日立および東北大学 原子分子材料科学高等研究機構(WPI-AIMR)の折茂慎一 教授らの研究グループによるもので、11月11日~13日まで愛知県で開催される「第56回電池討論会」にて発表される。

一般的なリチウムイオン二次電池は、正極層と負極層をセパレータで隔てた構成となっており、電池内に満たした有機電解液を介して正極層と負極層の間でリチウムイオンが行き来することで充放電する。しかし、有機電解液は揮発性の有機溶媒が主成分であるため、リチウムイオン二次電池の耐熱温度は60℃付近とされ、高温環境では冷却機構が必要となるなど、用途が制限されている。

そこで近年、高温環境下でのリチウムイオン二次電池の利用を目指し、不揮発性の固体電解質材料の開発が進められているが、固体電解質材料は有機電解液に比べてリチウムイオン伝導性が低いため、実用化に向けて電池内部の抵抗を低減する必要があった。

同研究グループでは、新しい固体電解質としてLiBH4系錯体水素化物を開発し、これまでに室温から150℃までという広い温度範囲においてリチウムイオン伝導が可能であることを確認してきたが、今回、LiBH4系錯体水素化物を用いたリチウムイオン二次電池において、充放電性能の低下要因となる電池内の内部抵抗を低減する技術を新たに開発。スマートフォン向け電池の約1/1000の容量(2mAh)、約1/20のエネルギー密度(30Wh/L)に相当する小容量の電池において、150℃での電池動作を実証した。

従来、正極材料がLiBH4系錯体水素化物と接触すると分解反応が生じ、リチウムイオン伝導が阻害されるという課題があったが、今回、酸化物固体材料であるLi-B-Ti-Oを開発し、正極材料とLi-B-Ti-Oからなる緻密な複合正極層を作製。これにより、正極材料を保護し、分解によって増大する抵抗を抑制することができた結果、ほぼ0であった放電容量を理論容量の50%にまで改善できたという。

また、剥離抑制接合層として低融点アミド添加錯体水素化物電解質を開発し、両層の間に配置したことで、全固体リチウムイオン二次電池の内部抵抗が約1/100に低減。さらに前述の複合正極層技術と組み合わせることで、放電容量が理論容量の90%にまで増大したという。

同技術により、エンジンルームに搭載する自動車用の電源や大型産業機械に搭載するモータ用の電源、滅菌加熱が必要とされる医療用機器電源など、高温環境下での電池使用が可能となる。今後は実用化に向け、大容量化をはじめ、エネルギー密度の向上、充放電時間の短縮化など、性能向上を目指していくとしている。

全固体リチウムイオン二次電池の構成