GoogleがAndroid端末向けに独自のSoC (System on Chip)の開発を模索しているという話が出ている。OSプラットフォーマー自らがSoC開発を行うという例はAppleの「Ax」シリーズにみられるが、すでに多種多様のハードウェアがさまざまなベンダーから提供されているAndroidにおいて、Googleは何を狙っているのだろうか。

同件はThe Informationが報じている。それによれば、Googleは今年2015年秋に複数のチップメーカーに対して、Google自身が望む機能を盛り込んだデザインの独自プロセッサ(SoC)の共同開発提案を行っていたという。Googleの目的はいくつかあり、まず1つめは、断片化されたAndroidの世界を再統合しつつ、断片化に伴う諸問題を解決すること。もう1つは、Google自身が望む機能をSoCに直接組み込むことで、特にハイエンド市場においてAppleに対してより競争力を高めることが狙いだという。こうしたSoCに取り込まれる機能は、今後数年内にもAndroid OSに盛り込まれるということで、これまでソフトウェア方面からのアプローチ中心だったGoogleが、ハードウェアとソフトウェアの両面でAndroid開発を推進していく方針に転換していくのかもしれない。

この話そのものは噂の段階に過ぎないが、現状でGoogleとAndroidが抱えている問題を考えると、そうした方向性も1つの問題解決策ということで納得できる部分がある。最も大きなものの1つが「断片化」で、ハードウェアの多種多様性がAndroidの強みである一方、これが原因で「他のプラットフォームに比べて適切なタイミングでアップデートが提供されない」という結果につながっている。Googleがリファレンスとするハードウェア以外では、各メーカーが独自にソフトウェアを改変しなければならず、例えばセキュリティ上致命的な問題が見つかった場合であっても、こうした断片化がアップデートの障害となる。ソフトウェア作成にリソースを割ける大手を除けば、統一的なハードウェアが中小メーカーに提供され、Googleからアップデートが適時提供されることで問題解決の一助になるかもしれない。

もう1つは「差別化」の部分であり、特にミッドレンジに位置する製品の性能が年々向上してきたことで、ハイエンド製品への要求がさらに厳しいものになりつつあることが挙げられる。ミッドレンジの性能が向上してユーザーがそれに満足するようになったとき、もしハイエンドとの性能上の差異が少ないと感じられるようであるならば、ハイエンド製品の存在意義が問われるようになり、価格面でのプレッシャーも大きい。そこで、SoCそのものに手を加えて機能強化を行うことで、こうした差別化をしやすくするという狙いがあるようだ。こうした手法はハードウェアとソフトウェアを一体で開発しているAppleが得意とするもので、今後ハイエンドでの競合がさらに高まることを睨んでの施策と考えられる。Apple Insiderによれば、画像処理機能の強化や、Appleの「Mx」シリーズにみられるコプロセッサなどの開発が視野にあるということで、メインのSoC以外にもバイオメトリクスを含む各種センサーやカメラ技術の採用など、より広い視点での機能拡張を目指している可能性もある。