岡山大学は5月29日、光化学系Iというタンパク質複合体の構造を解明したと発表した。

同成果は同大大学院自然科学研究科(理)の沈建仁 教授(同大光合成研究センター長)、菅倫寛 助教と中国科学院植物学研究所の共同研究グループによるもので、5月29日付け(現地時間)の米科学誌「Science」に掲載される。

光化学系Iタンパク質複合体は、酸素発生型光合成において、太陽光を生物が利用可能な化学エネルギーに変換する役割を担い、水からの電子と光エネルギーを利用して、二酸化炭素を糖に変換するために必要な還元力を作り出している。高等植物の光化学系I複合体は14個のタンパク質と90個以上のクロロフィル(葉緑素)、22個のカロテノイドなどで構成されており、外側に光エネルギーを集める集光性アンテナタンパク質が4つ結合し光化学系I-集光性アンテナタンパク質複合体が形成されている。光化学系I-集光性アンテナタンパク質複合体における光エネルギーの高効率吸収・伝達の機構を明らかにするためには、同複合体の立体構造を解明する必要がある。

同研究グループは、エンドウ豆の葉から精製・結晶化した光化学系I複合体を、大型放射光施設SPring-8を利用することで2.8 Å分解能で立体構造を解析。その結果、155個のクロロフィル分子を同定し、これまで分かっていなかった多くのカロテノイド、脂質分子などの配置を解明した。さらに、詳細な構造が分かっていなかった多くのタンパク質サブユニットの構造を明らかにし、光エネルギーを吸収し、反応中心へ伝達する経路を同定することに成功した。

同研究グループは今回の研究成果について、光合成の機構解明や人工光合成での光エネルギー利用効率の向上だけでなく、他の巨大膜タンパク質の結晶構造解析にも重要な知見を提供することになるとしている。

高等植物光化学系I-集光性アンテナタンパク質I複合体(PSI-LHCI)の構造

植物PSI-LHCI複合体における色素(クロロフィル、カロテノイド等)の分布

植物PSI-LHCIにおける光エネルギーの伝達経路