慶大、レット症候群患者からiPS細胞を樹立 - 神経発生異常を特定

 

慶応義塾大学(慶応大)は5月27日、小児神経発達障害であるレット症候群患者からiPS細胞を樹立し、神経発生過程における異常を明らかにしたと発表した。

同成果は慶大医学部生理学教室の岡野栄之 教授、山梨大学大学院総合研究部環境遺伝医学講座の久保田健夫 教授、順天堂大学大学院医学研究科ゲノム・再生医療センターの赤松和土 特任教授の共同研究グループによるもので、5月27日付(現地時間)の英医学雑誌「Molecular Brain」オンライン版に掲載された。

レット症候群は女児の1万5000人に1人の確率で発症する疾患で、6カ月~18カ月は通常の発達経過をたどるものの、徐々にそれまでに獲得した言語・運動能力を失うとともに特徴的な手もみ運動やてんかん、自閉症といった症状が現れる。この疾患の患者の約90%以上が2本のX染色体上にあるMECP2遺伝子のどちらかに変異を有していることがわかっている。現在は根本的治療法がないものの、自閉症状を示す疾患のなかで原因遺伝子がわかっている数少ない疾患であることから、レット症候群の研究が進めば自閉症全体の治療法の解明にもつながることが期待されている。

これまでの研究では、患者の脳から神経系の細胞を入手することは不可能なため、MECP2遺伝子に変異を加えたマウスを用いてレット症候群の解析を行っていたが、実際の患者の症状は再現出来ていなかった。

今回の研究では、MECP2遺伝子に同じ遺伝子変異を持つ2名の患者の皮膚細胞を使用した。女性の細胞は2本のX染色体を有し、ランダムに片方のX染色体の遺伝子発現が抑制されるため、正常MECP2遺伝子発現細胞と変異MECP2遺伝子発現の2種類の細胞が混在している状態からiPS細胞を作成した。その結果、正常MECP2遺伝子が発現しているiPS細胞と変異MECP2遺伝子が発現しているiPS細胞の2種類が得られた。

作成した2種類のiPS細胞から誘導した神経幹細胞と神経細胞を比較したところ、変異MECP2遺伝子をもつ細胞では、細胞外のイオン濃度調整や血流調整、神経伝達物質の調節を担うグリア細胞の一種であるアストロサイトが、正常な細胞に比べてに比べて多く存在していることが判明した。研究グループは、今後の研究で、グリア細胞の発生異常がレット症候群の諸症状とどう関連しているか明らかにする必要があるとしている。

今回の研究の概要

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