理化学研究所(理研)は3月9日、食品の非破壊放射脳測定を実現する低コスト測定器「LANFOS(Large Area Non-destructive Food Sampler)」を開発したと発表した。

同成果は理研グローバル研究クラスタEUSOチームのカソリーノ・マルコ チームリーダーと、ジーテックの後藤昌幸 代表取締役らの共同研究グループによるもので、3月24日の日本物理学会第70年次大会で発表される予定。

福島県では、東京電力福島第一原子力発電所事故から4年を経た現在でも食品に関する風評被害が問題となっている。その対策として農産物や魚介類、およびその加工食品などの放射能を測定することで安全性を確認している。しかし、従来の測定器は放射線(ガンマ線)を感知すると発光する部分(シンチレータ)が底面にあるため、食品の形によっては正確な測定が難しく、ミキサーで小さく粉砕してから測定する作業が必要となっていた。

今回開発された測定器「LANFOS」では、食品を囲うようにシンチレータを配置。材料費が安く成形が簡単なプラスチックシンチレータ(PS)を検出器として使うことにしたが、PSはエネルギー分解能が低いため天然由来の放射性カリウムと、原発事故由来の放射性セシウムを区別できないという課題に直面した。

従来型の測定器と「LANFOS」の模式図

そこでPSが放射線を感知した際の発光シグナルの数(光子数)の分布を調査したところ、カリウムとセシウムではガンマ線のエネルギー差によって、光子数に有意な差があることがわかった。この結果をベースに光子分布数の形からカリウムとセシウムの割合を算出する手法を開発し「LANFOS」の完成にこぎつけた。

放射性セシウムとカリウムの光子数分布

同研究グループは「LANFOS」の技術を活用することで、箱詰めされた食品をそのまま計測できる大型の放射能測定器を安価に制作することが可能となり、出荷時の全品検査の実現が期待される。

放射能測定試験の様子