早稲田大学(早大)は2月17日、建物の壁や、公共交通機関などの切符の磁気面などからの指掌紋検出、また重なった指掌紋の分離検出を可能とする光スペクトル計測技術を応用した装置「ハイパー・フォレンシック・イメージャー」を開発したと発表した。

同成果は、同大 理工学術院 宗田孝之教授(先進理工学部)によるもの。JFEテクノリサーチと科学警察研究所と共同で行われた。

DNA型鑑定精度が飛躍的に向上した現在でも、"万人不同、終生不変"の指掌紋は、さまざまな犯罪・事故現場において被疑者などの特定につながる有力な現場鑑識資料となっている。同装置は、現場に残されたヒト由来成分、すなわち指掌紋や体液などに含まれる脂肪やたんぱく質(アミノ酸)を非破壊かつ非接触に分析することが可能である他、スーツケース程度にコンパクトに収納できるため可搬性にも優れている。これらにより、鑑識能力の質を高め、被疑者特定・検挙に威力を発揮する可能性があり、ひいては犯罪者に対する抑止力という波及効果をもたらし、安全・安心な社会の実現に資することが見込まれる。

また、多数の犠牲者が出る自然災害でも、同装置にさらなる改良を加えれば、遺体の指紋を正確に撮像し2次元展開することができ、指紋による身元確認時間を著しく短縮できると推測される。さらに、潜在指掌紋が発する蛍光スペクトルから、印象時期を特定できる可能性も秘めており、今後の課題として取り組んでいくとコメントしている。なお、同装置は昨年10月末より、科学警察研究所などと合同実証実験を開始しているという。

開発した可視域対応の「ハイパー・フォレンシック・イメージャー」