ワコムは、神奈川県・パシフィコ横浜で行われているカメラと写真映像のワールドプレミアムショー「CP+(シーピープラス) 2015」にて、5人のプロ写真家によるペンタブレットを使ったフォトレタッチセミナーを開催している。会期は2月15日まで。入場料は1,500円(公式サイトで事前登録を行うと無料)。ここでは、その中の「Cintiq 27QHDを使った画像処理とプリントの極意」の様子をお届けする。

同セミナーに登壇したのは、トッパングラフィックコミュニケーションズ プリンティング・ディレクターの小島勉氏。写真、イラスト、文化財など、さまざまなジャンルのアート表現に携わり、写真家から絶大な信頼を寄せられるプロフェッショナルプリンターだ。同氏は、写真データをプリント作品に仕上げるためのプロのテクニックを紹介した

「2000年ぐらいからインクジェットのプリンターを使った作品づくりに携わっています。最近では文化財の複製・復元にもインクジェットプリンターが使われるなど、その適用分野がどんどん大きくなってきているのを感じますね」と語る小島氏。

小島氏も現在ワコムのペンタブレットを使っているが、手元にあるのは板型の旧バージョン「Intuos3」。今回のセミナーにあたり、最新モデル「Cintiq 27QHD touch」を使っての作品制作に取り組んだところ、「作業効率がかなり良くなりました」とコメントした。 これまで板型のペンタブレットを使っていたこともあり、「普段と違う使い方ができるようになり、作画作業がとても楽しい」という所感を持ったという。そのほか、「27インチの大画面だと、A3サイズが100%通常表示できる上に、ツールバーも表示できるので操作性がいいですね。「タッチ機能」をONにすると指先で画面を拡大したり、そして回転したりと自由に写真を動かすことができるので、写真と新しい向き合い方も楽しめると思います」と、27インチの画面のメリットも語った。

頭上に設置されたカメラで、作業中の手元の様子も確認できるような会場セッティングとなっていた

また、「Cintiq 27QHD touch」より新たに搭載されたワイヤレス型のリモコン()についても「より非常に作業性が向上したと感じました。以前は本体に組み込まれていたわけですが、リモコンになったことで、使いやすい位置で作業ができますし、充電2時間で160時間使えるのもいいですね」と好感触。「自分はPhotoshopを使うことが多いので、ボタンのほとんどをPhotoshopのショートカットに当てています。このようにカスタムした設定をワコムクラウドで共有できるのが大変便利なので、お使いの方は利用してみみるのもオススメです」と、実地における機能の活用を紹介した。

そのほか、タッチペンに関して、「僕は作業中、常にペンをしっかり握っているのでボタンは全て非アクティブ、という特殊な設定で使っています。特に筆圧をしっかり感知する、バネのついたストローク芯がいいですね。筆圧をかける方なので軽く押さえるとほそく、ぐーっと書き込むと太くなるような設定にしています。それによって手の動きや感覚に近いペンの操作ができます」とコメントした。

そして話はセミナータイトルの「プリントの極意」へ。「デジタルデータは当然のことながら、モニターで見たものをプリントします。画像処理(レタッチ)のキモは「レタッチは画像(データ)の破壊である」ということをしっかり頭にたたき込んでいくことです」と言及。「つまり、レタッチの作業はなるべく最小限に抑えていきたいわけですが、そのためにはきちんとした機材をそろえるというのが大切です。特に「正しく」みえるモニターや、カラーマネジメントに適した機材をそろえるのが一番の近道ですね」と、レタッチはなるべく抑え、「正しい」画像を表示できる環境が大切であると語った。

「Cintiq 27QHD」は、ハードウェアキャリブレーション機能を搭載し、正確な色表現を実現することができることになったのも大きな特徴。これにより、多くのクリエイターの作業効率を向上するだろうと小島氏は話す。

ここからはいよいよ「印刷」工程へ。「プリントの際は、Photoshopの[表示]→[校正設定]→[カスタム]から[シュミレーションするデバイス]をクリックし、プリントするプリンターを選択すると、該当プリンターでプリントした場合の仕上がり色で表示されます」とプレビュー方法を解説し、「色を見るために都度都度出力して確認&調整するのは大きな無駄です」と断言。「A3サイズともなると1枚出すのに時間もかかるし、コストもばかになりません。モニター上である程度正確に確認することができれば、その両方が節約できるので作品を作り込んでいくためには重要だと思います。また、安定した観察光源で評価することも大事です。正しい色を見るためには「色評価蛍光灯」というものがあります。ディスプレイとプリンタの出力結果の色を合わせたい!というときはカラーマネージメントに対応した適切な照明環境を整えることも考えるべきでしょう」と、出力後の照明環境についても整えるべきとコメントした。「色評価蛍光灯」は5000円くらいのお手軽なものから本格的なもの、LEDタイプのものもあるので気になる方は入手を検討してみてほしい。

また、ワコムブースでは同社のペンタブレット製品を体験できるコーナーも設けられ、Windows OS搭載のクリエイティブタブレット「Cintiq Companion 2」(2月20日発売予定)や、本セミナーでも用いられた27型QHDの液晶パネルを搭載の液晶ペンタブレット「Cintiq 27QHD touch」(2月13日発売)などの新製品を体験できる。

来場者にはワコムユーザーが多く見受けられ、「(Cintiq 27QHDの)大きさに驚きました。手で操作したり、画像を動かしたりできるのもすごく感覚的でいいですね!画面もとてもきれいだし、そろそろ板(Intuosユーザーだった模様)から切り替えたいかも…」と話していた。