台湾海峡でアジア第4の原人化石を発見

  [2015/01/29]

台湾海峡の澎湖(ほうこ)諸島近くの海底から新しい原人の化石を、国立科学博物館の海部陽介(かいふ ようすけ)人類史研究グループ長と台湾国立自然科学博物館の張鈞翔(ちょう きんしょう)副研究員兼主任らが発見した。澎湖1号と名付けた。ジャワ原人や北京原人、小型のフローレス原人に次ぐアジア第4の原人化石で、比較的新しい19万年前~1万年前に生息していたらしい。アジアの人類進化の空白を埋める発見といえる。京都大学、オーストラリア国立大学、お茶の水女子大学、東海大学との共同研究で、1月27日付の英オンライン科学誌ネイチャーコミュニケーションズに発表した。同誌のその号のハイライトに選ばれた。

写真1. 保存良好な下顎骨の右半分の化石、澎湖1号。歯が大きいほか、オトガイが突出しないなど、原始的な特徴が見て取れる。(提供:海部陽介・国立科学博物館人類史研究グループ長)

写真2. 澎湖1号(中央)とジャワ原人(左、約80万年前)と北京原人(右、約75万年前、左右 を反転している)の下顎骨化石。年代の新しい顎が頑丈であることがわかる。(提供:海部陽介・国立科学博物館人類史研究グループ長)

地図. アジアの原人地図。緑色の部分は、海深100mより浅い海域で、 氷期の海面低下時に陸になったと考えられる。(提供:国立科学博物館)

グラフ. アジアにいた原人・旧人と澎湖人の位置。澎湖人は中国南部の和県人とともに、アジアの第4の原人に位置づけられる。(提供:国立科学博物館)

澎湖1号の原人化石は、保存良好な下顎骨の右半分の化石で、オトガイが突出していないなど原始的な特徴があった。その特徴から、この澎湖人は現生人類の祖先ではないとみられる。インドネシアのジャワ原人(約120万年前~5万年前)や小型のフローレス原人(約1万2000年前まで生息)、中国の北京原人(約75万年前~40万年前)と比べて、顎や歯が頑丈だった。顎や歯は人類の進化とともに繊細化するという傾向からみて、従来知られていた原人の直系の子孫とみなせず、独自の原人化石と位置づけた。

新生代第四期の氷期には、海水面が下がって台湾とアジア大陸は陸続きになっていた。このため、台湾本島と澎湖諸島の間の海底からは、ゾウなどの動物の化石が底引き網にかかって大量に引き上げられている。その中に古代型人類の化石が混じっていることに、写真を見た高井正成(たかい まさなる)京都大学霊長類研究所教授が2009年に気づき、国際研究チームが結成され、愛好家が所有していた化石の詳しい分析や年代測定に取り組んだ。

研究チームは化石骨から直接、年代を測定できなかったが、「古くても45万年前よりさかのぼることはない」と判断した。さらに、約20万年前以降に東南アジアに出現したハイエナの1種とほぼ同年代であることが、化石骨に含まれる元素の増減からわかり、19万年前~1万年前という年代まで絞り込んだ。

また、澎湖1号の化石の頑丈な特徴は、中国南部の和県から出土していて議論があった原人化石(約40万年前)と共通することもわかった。澎湖人は、この和県人と合わせて、アジア地域にこれ まで認識されていなかった第4の原人グループがいたことをうかがわせる。原人はアフリカで猿人から進化し、185万年前ごろにユーラシア大陸に広がった。その子孫がアジアで多様な原人、旧人になっていった。澎湖1号の発見で、このような原始的人類がかなり最近までアジア大陸辺縁部に生き残っていた可能性が浮かび上がってきた。

海部陽介・人類史研究グループ長は「保存のよいアジアの原人・旧人化石はこれまでインドネシアと中国でしか見つかっていない。澎湖人はこの地理的空白を埋める。アジア東南部に独自の原人集団が生き残っていた可能性を示し、アジアでの古代型人類進化史の多様性と複雑さを印象づけた。この化石原人がどの種に属し、ほかの古代型人類集団とどのような関係にあるかはさらなる研究が必要だ」と指摘している。



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