JFEスチール、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、新構造材料技術研究組合(ISMA)は1月14日、鉄鋼材料に含まれる炭素の含有量を定量的に分析にできる装置「FE-EPMA」を改良し、世界最高精度となる0.01%レベルまで分析精度を高めることに成功したと発表した。
鉄鋼材料の強度は炭素濃度を高めることで増加するが、一方で伸び特性が低下し、プレス成型時の加工性が低下してしまう。このため、強度と加工性を両立するには鉄鋼材料の中で炭素濃度が高い組織と、炭素濃度が低い組織が微細に分散した複合組織にする必要があり、微細組織の炭素濃度と分布状況を従来よりも厳密に制御することが重要になる。
鉄鋼材料の炭素濃度を定量分析するには、電子マイクロアナライザ(EPMA)を使用した電子線分析が一般的だが、分析の進行とともに試料表面で炭素が徐々に堆積して炭素濃度が増大し、分析面積が狭くかつ炭素濃度が低い組織であるほど分析精度が大幅に低下するという課題がある。
これに対しJFEスチール、NEDO、ISMAの三者は、「FE-EPMA」に炭素専用の検出器を3台組み込み、炭素の堆積を抑制する機能を複数具備させるなどの改良により、従来は炭素含有量0.1%レベルまでだった定量分析精度を、10倍の0.01%まで高めることに成功した。
同装置を活用することで、自動車用高強度鋼板をより高精度で分析できるようになり、熱処理条件の確立や、サンプル材料製造時の複合組織の造り込みの精度向上に高い効果を発揮することで、開発の迅速化につながることが期待される。