あらゆるモノがインターネットに繋がり、WEBはもはや仮想空間として独立して存在するものではなくなり、スマートデバイスによって人々を取り巻くあらゆるメディアが繋がりソーシャル化しつつあります。トリプルメディアがシームレス化したハイパーソーシャル元年になりそうな2015年、マーケティングはより本質的な取り組みが求められる、言わば“原点回帰”の時代を迎えているのかもしれません。
あけましておめでとうございます!SMMLabの藤田です。
ソーシャルメディアの隆盛によって大変革が始まったマーケティングは、スマートデバイスやクラウドコンピューティング、ビッグデータと言ったテクノロジーの革命的な進化によって、さらに変化のスピードを加速しています。しかしデジタル化によって曖昧さが排除され、透明化したことで見えてきた、“変わらない”マーケティングの本質に気付き始めたマーケターの方も多いのではないでしょうか?
そこで今回は、時流に流されるのではなく時流を乗りこなすマーケティング戦略のために、2015年にポイントとなるであろうトレンドをまとめてみました。
1. データ活用待ったなし
「ビッグデータ」という言葉が先行しすぎて、2014年は「データ活用」への取り組みハードルが必要以上に高くなってしまったということはないでしょうか?
そこで今一度、マーケティング・コミュニケーションを設計する上で「なぜデータが必要なのか?」を考えてみてください。
まず、最初にクリアにすべきポイントは
・顧客が誰かを知る
・顧客のインサイトを知る
・顧客の行動を知る
・顧客の心理状態を知る
……etc. つまり「顧客を理解する」こと。
データを活用することによって、これまで以上に深く顧客を理解することが出来れば、受け入れられやすいメッセージや伝達方法、タイミングが見えてくるはずです。
そのためには必ずしも“ビッグ”なデータは必要では無いかもしれません。自社の購買履歴などの顧客データやCRMデータ、WEBのアクセスログ、これまでのソーシャルメディア活用で得たファンやフォロワーに関するデモグラフィックなデータなどを「統合」するだけでも、マーケターの仮説立てには十分役立つデータになるはずです。2015年は「ビッグデータ」というキーワードに囚われず、自社で出来る範囲からでも一日も早く「データ」活用をスタートするべきです。
参考記事:
「コンシューマー・インサイト」とは?
http://smmlab.jp/?p=15981
2. 「個客化」データで、よりパーソナライズされたリアルタイムなOne to Oneへ
しかし、世界がハイパーソーシャルになる一方で、マーケティングはよりローカルかつパーソナルなアプローチが求められています。そのためには、スマートデバイスによる行動データやソーシャルメディアにおける興味・関心のデータを活用し、自社が既に繋がっている顧客を細くセグメントし、ターゲティングを精微にしていく「個客化」が不可欠です。
One to Oneコミュニケーション自体は新しいものではありませんが、データによって「ハイパーセグメンテーション」と「マイクロターゲティング」が可能になり、より高度なパーソナライズが実現できるようになりました。
データによって「個客化」された情報は、常にデジタルデバイスを身につけネットに接続し続けている生活者と、よりタイムリーに繋がるチャンスを広げます。GPSやBeaconなどによるジオフェンシングや決裁データを活用したCLOなど、オムニチャネルな施策では、パーソナルな「瞬間」を捉えられるかどうかが、成否を分けるようになるでしょう。
参考記事:
【ad:tech東京2014レポート(1)】ユーザーの心が動く瞬間=モーメントを捉えろ!
モバイル時代のマーケティングはリアルタイムでのエンゲージメント構築へ
http://smmlab.jp/?p=35016
「CLO」とは?
http://smmlab.jp/?p=36574
「ジオフェンシング」とは?
http://smmlab.jp/?p=9234
iBeaconのマーケティング活用がいよいよ本格化!
ジオフェンシングによるO2O施策の国内事例10選
http://smmlab.jp/?p=34723
3. 広告はオムニチャネル・アドバタイジングへ
また、Facebook広告の類似オーディエンスのような、個客化データの類似性を定量化し拡張する技術を活用すれば、費用対効果の高い新規顧客アプローチを実現することも出来ます。こうした取り組みはTwitterやGoogleでも始まっており、ソーシャルメディア広告の可能性を広げています。
さらにDMP(データ・マネジメント・プラットフォーム)を導入することで、デジタル広告全般でこのような精度の高いターゲティングが可能になり、広告のコストパフォーマンスを向上させることが出来ます。
しかも、デジタル広告の配信媒体は今やPC、モバイルだけにとどまりません。デジタルサイネージなどのOOHにも最適化した広告を配信することが出来ますし、さらにTVCMをはじめとしたマス広告とも連動して、オムニチャネル・アドバタイジングを実践する企業も増えることでしょう。
参考記事:
「DMP」とは?
http://smmlab.jp/?p=30322
「OOH」とは?
http://smmlab.jp/?p=36006
「オムニチャネル」とは?
http://smmlab.jp/?p=33805
4. 広告配信の最適化だけに留まらないDMP活用
DMPは現在、広告配信の最適化を中心に活用が進みつつありますが、DMPを使いこなすマーケターが増えることで、2015年はコミュニケーションの領域でもデータからの知見が活かされるようになるでしょう。2014年後半はコンテンツ・マーケティングとネイティブ広告が注目を集めましたが、どんなストーリーが必要なのか?どのプラットフォームが伝搬しやすいのか?といった戦略も、データによってより確度の高い設計が可能になるでしょう。
極度にターゲティングした広告で生活者を追い回すのではなく、刺さるメッセージを適切なタイミングに心地よく伝えることで、広告が今追いやられている「嫌われるもの」、「避けられるもの」という存在から、有益な情報として受け入れられる、本来の広告の姿を取り戻すことが出来るのではないでしょうか。
参考記事:
広告はパーツになり、むにゃむにゃしたコミュニティの入口になる
http://smmlab.jp/?p=23041
【今のうちに知っておきたい!】
ソーシャルメディア✕アドテクノロジーでデジタル広告はどう変わる?
http://smmlab.jp/?p=26023
5. ノンバーバル(非言語)なコンテンツで何を語るか?どう伝えるか?
モバイルからウェアラブルへと、デジタルデバイスがさらに進化するのにともなって、生活者同士のコミュニケーションも変化し始めています。2014年はモバイルデバイスの画面でより直感的に伝わる、画像や動画といったビジュアル・コンテンツの存在感が高まりました。
Instagram、Vine、Pinterest、Snapchatといった、最近若年層の利用が活発なソーシャルメディアが、いずれもノンバーバル(非言語)なコンテンツプラットフォームであることは、今後のマーケティング・コミュニケーションを考える上で無視できないでしょう。
IMC(Integrated Marketing Communications=統合型マーケティング・コミュニケーション)の父と呼ばれるドン・シュルツ教授は、“「ブランドを作るのはコンテンツだ。」、「コンテンツリッチな環境からブランドは生まれる。」”と言ったそうですが、データから得たインサイトによるブランド・ストーリーを、言葉に頼らず伝えるには、どのように凝縮して可視化するかを考えると、クリエイティブの重要性が再認識され、制作コストを見直す必要を感じる場面が増えるのではないでしょうか。
参考記事:
「IMC」とは?
http://smmlab.jp/?p=36873
「リッチコンテンツ」とは?
http://smmlab.jp/?p=13658
メディアは動画に向かい、企業はメディアに向かい、つまりすべてが動画に向かう
http://smmlab.jp/?p=29292
6. コンテンツ流通のカギはネイティブ広告とハッシュタグ活用?!
また、モバイルファーストな環境ではコンテンツをどう流通させていくかも、今までとは視点を変えて考える必要がありそうです。モバイルデバイスでは検索よりもアプリからの誘導のほうが効果的であり、台頭するニュースアプリにおけるネイティブ広告は、今後コンテンツ流通において重要なプラットフォームになるかもしれません。
更にソーシャルメディアを横断してコンテンツを関連付けることが出来るハッシュタグは、まだまだマーケティング活用の余地が大きいと思います。ハッシュタグの利用は早い者勝ち!自社のビジネスに重要なキーワードは早めに抑えた方が得策です。
海外ではハッシュタグを横串にソーシャルメディアに拡散したコンテンツをまとめた「ソーシャルハブ」を活用する企業も増えています。今年はソーシャルメディアで生成したコンテンツを、オウンドメディアにどう活かすかといったコンテンツマネジメントも検討していくべきでしょう。
参考記事:
Facebookでも絶対使ったほうがいい!ハッシュタグ活用のポイントと事例
http://smmlab.jp/?p=31943
ソーシャルメディアでコンテンツに火をつける!7つの極意【Mashable日本語版】
http://smmlab.jp/?p=30453
「オウンドメディアのソーシャル化」のために考えておくべき3つのこと
http://smmlab.jp/?p=18695
7. マーケティングメディアとして統合され、ソーシャルメディアはより戦略的な活用へ
データ活用が導入から実践フェーズに進む2015年は、マーケティング・オートメーションといった自動化の流れも加速するはずですが、データだけで作る定量的なシナリオだけでは生活者の琴線に触れることは出来ません。データの源泉となった心理や心象を理解し、生活者とリアルな人間同士として向き合ってこそ、共感を呼ぶドラマティックなブランド・ストーリーを創り出すことが出来るのではないでしょうか。
参考記事:
「マーケティングオートメーション」とは?
http://smmlab.jp/?p=30471
2014年までにソーシャルメディアでしっかりとエンゲージメントを醸成してきたマーケターにとっては、これまでの定性的なコミュニケーションを既存のマーケティング戦略の中でどう位置付け評価するかを定め、データとして定量化し可視化することで、マーケティング全体への効果を実感出来る一年になるでしょう。そしてまた、その過程でソーシャルメディアでのコミュニケーションが、これからのコミュニケーションをデザインするために非常に重要な基盤的取組みとなることが理解していただけると思います。
2015年は、ソーシャルメディア自体が一層成熟度を増し、ニッチなネットワークやコアなテーマに特化したサービスが増えるなど、更なる多様化・複雑化が予想されます。しかし、ソーシャルメディアをマーケティング全体に統合し、その位置づけと役割を明確にすることで、それぞれのプラットフォームごとに、特徴やユーザー層の違い、目指す目的によって使い分ける・組み合わせるといった、より戦略的な活用が検討出来るチャネルとなるはずです。
いかがでしたでしょうか?ソーシャルメディアのアカウント開設、運用が一巡し、今年は今後の活用を見直す企業も増えると思いますが、消費者の生活全体がソーシャル化している現在、もはやソーシャルメディア無くしてマーケティング戦略は成り立ちません。これまでのソーシャルメディア運用で得たコミニュケーションスキルと繋がった生活者とのエンゲージメントを資産として、ぜひ今年も積極的にソーシャルメディアを活用していただけたらと思います。SMMLabも引き続き、皆さまのソーシャルメディア活用に役立つ情報をお届け出来るように頑張ってまいりますので、今年も1年どうぞよろしくお願いします!
本稿は、ソーシャルメディアマーケティングラボにて掲載された記事を転載したものです。