東北大学は12月12日、鎖状と層状の2種類の低次元磁気格子からなる分子磁性体(分子磁石)を構造的に組み合わせることにより、それぞれの構成格子の構造と磁気的な特徴を併せ持つ新しい3次元格子からなる分子磁石を設計することに成功したと発表した。
同成果は、同大 金属材料研究所の福永大樹氏(同大学大学院 理学研究科化学専攻 博士前期課程2年)、宮坂等教授らによるもの。詳細は、ドイツ化学会誌「Angewandte Chemie International Edition」に掲載された。
同物質では、類似の構成部位の層状構造をもつ磁性体とπスタック型カラム状構造をもつ磁性鎖を選択することにより、両者の構造的な特徴である2次元層とπスタック鎖(柱)を組み合わせた"πスタック型ピラードレイヤー構造"を溶液内で自己組織的に集積させ、層内の磁気秩序と層間の磁気秩序を一義的に制御する方法論を提案している。そして実際に、同方法により、磁気相転移温度TC=82Kの分子磁石をつくることに成功したという。
今回の研究の結果は、2種類の低次元磁気格子を組み合わせて磁石を設計する新たな方法論を示しているだけでなく、電荷移動型錯体による高相転移温度磁石の開発に道筋をつけている。また、同設計法は、分子の持つ多様な機能性を組み合わせて磁性体を作ることも可能にしており、多機能性磁性体の開発という点でも今後興味が持たれるとコメントしている。