京都大学(京大)は11月6日、自閉スペクトラム症(Autism Spectrum Disorder:ASD)の群と発達障害のない群に対し、ASDの行動パターンを行う人物を記述した(定型発達)文と、ASDではない一般的な行動パターンを行う人物を記述した文を読んでもらい、自分に当てはまるか、自分と似ているかを判断してもらう際の脳活動をfMRI(機能的磁気共鳴画像法)を用いて計測したところ、ASDの群はASD特徴がある人物を判断する際に、共感や自己意識と関連する脳部位が活動していることを確認したと発表した。

同成果は、同大の米田英嗣 白眉センター特定准教授、福井大学の小坂浩隆 特命准教授、同 齋藤大輔 特命准教授、ノースウェスタン大学の間野陽子 研究員、ジョンミンヨン 連合小児発達学研究科院生、国立精神・医療研究センター病院精神科医員の藤井猛氏、鳥取大学の谷中久和 特命助教、金沢大学の棟居俊夫 特任教授、国立精神・神経医療研究センターの石飛信 室長、大阪大学教授で福井大学特任教授でもある佐藤真氏、福井大学の岡沢秀彦 教授らによるもの。詳細は「Social Cognitive and Affective Neuroscience」電子版に掲載された。

今回の研究はASD特徴がある人物の行動パターン記述分(ASD文)と、定型発達(Typically developing:TD)の人物の行動パターン記述文(TD文)をASDの成人15名(平均26.7歳)と、年齢・知能指数を合わせたTDの成人15名(平均26.1歳)に読んでもらい、自分にも当てはまるか、主語となる人物が自分に似ているかを判断してもらい、その際の脳活動を調べるというもの。この結果、ASDの成人はASD特徴がある人物を判断する際に、自己の処理、共感に関わる腹内側前頭前野が有意に活動していることが確認され、自身と類似したASD人物に対して共感的な反応を示していることが判明した。

また、ASD人物を判断する場合、自閉症スペクトラム指数の得点が高いほど、腹内側前頭前野の活動が高くなることも確認され、ASDの傾向が高い人ほど、ASD人物に対して共感的に理解している可能性が示唆されたという。

この結果について研究グループは、従来、ASDのある人は共感性が乏しいと考えられてきたが、ASDがある人はASDの行動パターンをする他者に対して共感できることが示され、臨床場面への応用として、ASD傾向の強い人ほど、ASDがある人への援助者にふさわしいかもしれないという知見の提供につながることが期待されるとしており、今後はASDがある人の他者理解方略を解明し、支援に役立てていきたいとコメントしている。

ASD群がASD文を判断し、TD群がTD文を判断する際、腹内側前頭前野が有意に活動していることが確認された。また、同部位において、自己判断課題と他者判断課題との間に活動の有意差はなかったという