キヤノンマーケティングジャパン(キヤノンMJ)は9月25日、記者向けの説明会を開き、北海道大学発の読影サービス企業であるメディカルイメージラボ(MIL)と医用画像クラウドサービス基盤「Medical Image Place」を共同で開発し、「遠隔読影インフラサービス」を10月1日より開始すると発表した。

一般的に健康診断などでCTやMRIを撮影した画像について、担当医だけでその画像をもとに診断をすることはせず、診断の精度を高めるために医用画像の診断を専門とする「読影医」に画像診断を依頼し、その所見と合わせて最終的な診断をする。

しかし、全国に読影医は4000人ほどしかおらず数が不足しており、都市部に集中していることから、多くの病院は読影サービス業者に読影を依頼する必要がある。また、近年のCTやMRIは一回の撮影で以前より大量の写真を撮影するためデータ量が増大傾向にあり、その管理や活用が難しいことや、依頼検査の進捗管理がしづらいなど、運用の面に大きな課題があった。

一方、読影サービス業者側の課題としてはシステム投資の負担が大きい、一部の読影医に診断依頼が偏るなど、同じくコストを含む運用面に課題を抱えていた。

「Medical Image Place」はこれらの課題を解決すべく、業界トップクラスの読影実績を持つMILとキヤノンMJが共同で開発した医用画像に特化したクラウドサービス基盤。独自のデータ通信方式による高速化や、患者の体の位置のずれを高精度で補正するボリュームレジストレーションビューワーを標準装備するなど、読影の負荷を低減する工夫が図られている。

「Medical Image Place」のログイン画面

ボリュームレジストレーションビューワーでは、複数の画像を変形処理することで姿勢や位置を一致させることができる。

さらに、サービス利用者向けのポータル機能と専用SNSで、検査の進捗管理および診断結果を容易に共有でき、依頼が特定の読影医に偏らないようにする読影振り分け機能などの補助ツールによってよりスムーズな運用を実現する。

「自動振り分け機能」で依頼検査の偏りを無くすことができる。

10月1日からスタートする「遠隔読影インフラサービス」は、このクラウドサービス基盤上で稼動させるサービスの第一弾。遠隔読影サービス事業者およびその契約施設向けで、連係施設がCTやMRIなどで撮影した検査画像を、遠隔地の読影サービス事業者が読影し、読影レポートを連係施設に返送する仕組みを提供する。2015年1Qには第2弾として医療機関向けの「医用画像外部保管サービス」、2015年3Qに同じく医療機関向けの「医用画像システムサービス」を提供開始する予定。

「Medical Image Place」サービス全体のイメージ図。2015年にサービスを順次拡大していく。

キヤノンMJは近年、医療事業の強化・拡大に注力しており、2014年8月には3D医用画像解析技術に強みをもつAZEを買収するなど、医療画像ソリューションを強化してきた。同社の総合企画本部 HCS推進室の鷲足猛志 室長は、「AZEのグループ入り、クラウドサービスの開発・リリースという2つのアクションを通じ、医療画像ソリューション事業の本格展開に向けてグループシナジーを高めていく」とコメント。将来的には3DプリンタやMixed Reality技術など、キヤノンMJが提供している3D関連商材との連携を深め、医療機関や患者に向けて新たなサービスを創出していくという。

3DプリンタやMixed Reality技術との連携を図ってビジネスを創出できるのはキヤノンMJの強みといえる。

総合企画本部 HCS推進室 鷲足猛志 室長