東京大学(東大)と慶応義塾大学(慶応大)の共同研究チームは、従来の手法では観察することができなかった1兆分の1秒以下の時間での撮影を可能とする世界最高速の連写カメラを開発したと発表した。
同成果は、東京大学大学院理学系研究科の中川圭一氏(日本学術振興会特別研究員 PD)、同大学院工学系研究科精密工学専攻の佐久間一郎教授、同大学院理学系研究科化学専攻の合田圭介教授、慶応大理工学部電子工学科の神成文彦教授らによるもの。詳細は英国科学誌「Nature Photonics」オンライン版に掲載された。
既存の高速度カメラでは、機械的・電気動作の限界から、撮影速度がナノ秒に制限されており、ピコ秒(1兆分の1秒)といった超高速の現象を捉えることが難しい。また、より高速な現象の疑似的動画を得る手法は存在するが、動画を作るために繰り返し撮影が必要であり、一度しか起こらないような非反復的な現象をとらえることは困難であった。
そうした課題に対し今回同研究チームでは「Sequentially Timed All-optical Mapping Photography (STAMP)」と呼ばれる従来の高速度カメラとは異なる超高速撮影法を提案し、その実証を行ったという。同手法はさまざまな色の光を用いて動的現象の像を空間的にばらけさせ、その後で動画として再構成するというもの。実証実験では4.37兆分の1秒ごとに画像を連続的に撮影することで、超高速で生じる現象を連写することに成功したという。
なお、研究チームでは、今回の撮像法を活用することで、従来では観察できなかった未開拓の領域を観察することができるようになることから、分野を問わず多くの領域で先端低基礎研究を支える強力なツールとして今後、活用されることが期待されるとコメントしている。